SIMフリー端末は、デュアルSIMタイプのものも増えてきた。これは文字通り、端末に2枚のSIMが挿せるタイプなのだが、モトローラ製のMoto G4 PlusはこのデュアルSIM対応なうえに、通信を2枚のSIMで使い分けができるのだ。
どういうことかと言うと、片方のSIMトレイにはこれまでの格安スマホで契約したデータ通信専用SIMカードを挿し、もう片方のSIMトレイには、ガラケーで使っているキャリアの、3Gの通話やメール契約、もしくは通話定額専用契約のSIMカードを挿して使えるということ。
つまり、キャリアとの契約を解除して乗り換えるような手間もコストもかけずに、ガラケーとデータ通信専用の組み合わせの低額料金を、1台にまとめて実現できてしまうというわけである。
そこに対応した、本邦初の端末がMoto G4 Plusなのだ。そして、今後は段階的にこのような端末が増えていくわけで、そうなると、Aさんのようなこれまでスマホとガラケーの2台持ちだった人たちが1台に集約でき、かつ従来通りの安価な運用ができる。
もっとも課題もある。通信方式の違いで、Moto G4 Plusで使えるのはNTTドコモとソフトバンクのSIMで、KDDI、つまりauユーザーは現状、使えない。
ただし今後、auの通信方式にも合った端末はいずれ出てくるだろうから、待てる人は待ったほうがいいだろう。ちなみにAさんもauのガラケーユーザーなので、この点は対応端末が出てくるまで気長に待とうと考えているという。
いずれにしろ、いま以上にキャリアからSIMフリー市場に顧客が流れるのは必至で、キャリアはかなりのダメージを受けることになるだろう。
そもそも、キャリアと格安SIM市場は、たとえば証券市場の構図になぞらえることができる。証券界は、売買委託手数料が少ないネット証券に対し、手数料が高い従来型の大手証券という構図で、個人向けビジネスはネット証券に置き換わり、大手証券はシニアや富裕層、あとは法人向けに強いことが特徴となる。証券だけでなく、これはネット銀行やLCC(格安航空)などにもあてはまる。
端末2台持ちから1台への集約トレンドは、通信キャリアの“終わりの始まり”になるはずだ。
●文/河野圭祐(月刊BOSS編集委員)