本場の味を自らの舌で確認するため、時間があればイタリアに飛ぶ。だからといって頭の中は店のこと、料理のことばかりの仕事人間ではない。「誰だって楽をしたいし私もそう。でも、楽をしたらダメ。楽しむことが大事なんです」と笑う。イタリアでの修業中、同僚は仕事ばかりしている落合氏を「何が楽しくて生きているんだ」と呆れ、「もっと人生を楽しめ」と教えた。
「今、店に行くと『仕事が終わったらさっさと帰る人間が一番偉いんだよ』とスタッフにいうのが口癖なんです。私自身、内緒で仕事サボって遊んでるしね(笑い)。つい先日も、生まれて初めてディズニーランドに行きました。たまたまチケットをいただいて、朝から行ったら天気が悪くてガラガラ。2時半まで8つもアトラクションに乗れた。すごいでしょ?(笑い)」
◆おちあい・つとむ:1947年、東京都出身。高校中退後、日本橋のレストランなどでの修業を経て1966年にホテルニューオータニに入社。1971年、『ざくろ』グループに移り、1976年に渡仏。イタリアで約2年修業の後、1982年『グラナータ』のシェフに就任。1997年、『ラ・ベットラ・ダ・オチアイ』を開店。現在、日本イタリア料理協会会長。
■撮影/江森康之 ■取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2016年9月9日号