奈良時代に中国から伝来したなす。漢方ではなすは体を冷やす野菜として、鎮痛・消炎のために使用されてきた。「秋なすは嫁に食わすな」ということわざは、嫁いじめというよりも、体を冷やして流産したら大変だ…という気遣いから生まれたという説が有力だ。
栄養面で知られるのは、皮に含まれる色素成分のナスニンとアク成分のクロロゲン酸。どちらも強い抗酸化作用があり、ナスニンにはコレステロールの酸化や細胞の老化抑制効果、クロロゲン酸には活性酸素による過酸化脂質の生成抑制作用があるため、生活習慣病全般の予防と改善に有用だ。
秋が最旬のなすだが、特に皮の紫色にむらがなく艶と張りがあり、ヘタがツンツンと尖って、触ると痛いぐらいのものが新鮮だ。
しかし、なすに限らず、店頭で求めた野菜の多くは乾燥が進んでいる。調理をする前、あるいは冷蔵庫で保存する前に、薄い塩水を張ったボウルの中に放って30分ほど置いておく。こうすることで葉や実に水が戻り、みずみずしさが復活する。家庭料理研究家の松田美智子さんはこう話す。
「なすは冷気に弱く、冷蔵庫に入れておくとあっという間にしなびたり、種が黒ずんだりします。そこで、まとめて焼きなすなど、シンプルな下調理をして保存なさるのをおすすめします。だし浸しにしておくのも一考。酒肴や副菜になりますし、汁椀にもそのまま使えます」
そこで、最旬のなすをおいしく食べるレシピを紹介しよう。
■焼きなすのだし浸し
【1】上記の「うるおいを呼び戻す」が済んだなす4本を、めん棒などで全体を軽くたたいておく。
【2】強火で熱した焼き網(あるいは魚焼きグリル、250℃以上で予熱したオーブンでも可)の上になすを並べ、時々上下を返しながら、皮に亀裂が入るまで焼く。
【3】がく下に切り込みを入れ、それを手がかりに皮をむく。
【4】漬けだしを準備する。小鍋にだし1カップと酒大さじ3を入れて煮立てる。薄口しょうゆ大さじ1を加えて火を止める。
【5】板ゼラチン2枚(粉の場合は3g)を水で戻して水気を絞る。【4】に加えて溶かす。
【6】なすはヘタを持って竹串で4つに裂く。ヘタを切り落として密閉容器に並べ、【5】を注ぎ入れて冷蔵庫で冷やし固める。冷やした器に盛り、大葉をちぎってあしらう。
※女性セブン2016年9月22日号