国のメタボ健診では、糖尿病の診断は1回の採血(ヘモグロビンA1cの値の測定)と過去の病歴調査という簡易な手法が採られている。一方、久山町が採用した「糖負荷試験」は2回採血をして血糖値を測るなどするため、受診者1人につき最低2時間かかる。
それだけ住民に負担を強いるものだが、研究チームとの信頼関係があったからこそ、検査を行なうことができた。清原氏が続ける。
「成果ははっきり出ました。2002年まで追跡して精度を高めたデータでみると、糖尿病患者の男性の脳卒中(ここでは脳梗塞)リスクは、正常な血糖値の男性のなんと2.5倍まで上昇したのです」
血糖値が高い状態が続いてしまうと全身の血管で動脈硬化が進行して脳卒中を起こしやすくなる。現在ではよく知られたメカニズムだが、久山町研究がそれを明らかにするきっかけを作ったのだ。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号