11月8日「いい歯の日」。そこで今回は歯科矯正に関して、絶対に知っておきたい知識や、正しい矯正歯科専門医の見分け方をレポート。治療期間が長くて先が見えにくい、おまけに費用が高額だからこそ、絶対に失敗しない歯科矯正法をお伝えします。
できれば歯を抜いたり、矯正器具をつけたくないという人は多いだろうが、抜歯しない矯正やマウスピースのみでの矯正を謳う歯科医院には注意が必要だ。星歯科矯正(神奈川県相模原市)院長・星隆夫さんは次のように指摘する。
「患者さんはもちろん、本当なら歯科医師も健康な歯は抜きたくありません。しかし、日本人の場合はあごが小さく奥行きが狭いため、8割以上は左右各1本程度は抜歯しないと正しい矯正はできないのが実情です。ですから、最初から状態を見もせずに“抜歯せずに矯正します”と謳う医院は信用できません」(星さん)
抜歯せずに歯科矯正するのは、到底入らないあごに無理に歯を押し入れようとすること。すると結局は歯並びに問題が生じ、冒頭で紹介した、歯が前に出る“カッパ口”になってしまう可能性が高い。
また、短期間での矯正を謳ったり、マウスピースのみでの矯正を掲げて、手軽さを強調する医院にも注意したい。「本当の矯正歯科への知識と経験があれば、短時間矯正やマウスピースのみでの矯正を安易に謳えない」と、今回取材した専門家は口をそろえる。
「着脱可能なマウスピースタイプの矯正装置は、食事中や外出時など、どうしても取り外してしまう時間が存在してしまうため、矯正に時間がかかります。とくに永久歯が生えそろってない子供の矯正治療に、マウスピースは効果が少ないことを知っておいてほしいですね」(長野県上田市・おおの矯正歯科院長の大野秀徳さん)
また、昨今よく耳にするインビザラインは、2週間ごとに装着し直す矯正用歯形をコンピューターと3Dプリンターで一気に作成する最新式だが、微妙な噛み合わせが調整しにくいという弱点がある。
「楽器を吹く音楽家や話す職業の人などは、ワイヤーが目立つブラケット矯正が施しにくいため、マウスピース系の器具を使う場合がありますが、それでも、最終的にはブラケット矯正で微調整する必要があります。つまり、マウスピースだけではどうしても限界があるのです」(星さん)
結論、歯科矯正で最も有効なのは、表側にワイヤーをつけるブラケットだと考えられている。しかし、審美的な要素も加わり、治療方法は多岐にわたる。その主な治療法と費用や期間の目安をまとめたので、参考にしてほしい。
【主な矯正治療別の特徴と期間・費用の目安】
●マウスピース治療
費用:25万~150万円
期間:半年~2年
特徴:最新式の透明度の高いマウスピースは目立たない。自分で取りはずし可能で、食事や歯磨きも通常通り可能だ。ただし適用範囲は限られ、これのみで完治は困難。
●舌側ブラケット治療
費用:130万~200万円
期間:2年+α1年
特徴:成人矯正の増加でニーズが高まっている歯の裏側に矯正装置を装着する目立たない治療法。ただし、違和感が強く、発音しづらく、治療期間も長くかかりがち。
●表側ブラケット治療
費用:80万~130万円
期間:2年半+-半年
特徴:もっとも一般的な治療法だがオーダーメードしやすく、幅広い症例に効果的。器具を歯の表側につけるため目立つが、目立ちにくい素材も最近選べるようになった。
※女性セブン2016年11月17日号