それよりも懸念されるのが、セール効果の分散化である。日本ではこれからクリスマス、歳末大売り出し、そして新春の初売りとセールと続く。事実、今回のブラックフライデーで買い物をした人からは、こんな声も聞こえてきた。
「ちょうど子供が欲しいと言っていた玩具が安く売っていたので、クリスマスプレゼントにする目的で早めに買って自宅に隠してあります」(30代女性)
小売業界が目論むブラックフライデーが、年末年始のセール本番に向けた“前哨戦”のつもりであっても、消費者の消費意欲が続いてゆくとは限らないのだ。前出の鈴木氏もこういう。
「わざわざブラックフライデーを取り入れなくても年末セールはどんどん前倒しの傾向にありますし、衣料品をはじめ小売業界の『在庫一掃セール』的な意味合いは消費者も敏感に気付いています。
だから、たとえ『期間限定、早い者勝ち』などと煽ったからといって、慌てて安物に飛びつく消費者は少なくなりましたし、いまはリアル店舗よりもネットで買ったほうが安い場合も多い。消費構造が大きく変化している中で、マスを相手に大量の商品を安売りでさばけば必ず売り上げに結びつく時代ではありません」
本家・米国のブラックフライデーでも、実店舗の売り上げは減り、代わりにネットショッピングの支出額が増えている。ブラックフライデーの翌週月曜はオンラインショップ等の歳末セール開始日、「サイバーマンデー」と呼ばれているが、日本でもリアル店舗のお祭り騒ぎよりもネット販売に力を入れるべきかもしれない。
いずれにせよ、冷え込んだ消費を再び拡大させるべく「安売り」ばかりに頼っていたら、小売業も消費者も“セール疲れ”してしまうだろう。
当たり前だが、日本版ブラックフライデーの成否は米国版の“直輸入”ではなく、日本の置かれた消費動向にどれだけ即せるかにかかっている。