2016年の日本経済界を揺るがした大企業をめぐるニュースの多くには、「創業家の強い影響力」という共通点があった。時に成長を押し上げる原動力になり、時に抵抗勢力になり、時に経営を危うくする。「畏るべき創業家」を解剖する。
スーパーゼネコンと呼ばれている建設会社は、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店、大林組の5社。このうち大成建設を除く4社は創業家による経営関与が続いている。建設業界に詳しいジャーナリストの千葉利宏氏が解説する。
「建設業というのは基本的に請負の仕事なので、個人の業績が見えづらく、社内で権力闘争が起きると揉めやすいのです。だから、オーナー家の人間を御輿に担いだほうが都合がいいという判断が働くのではないでしょうか」
もっとも、関与の度合いは企業によって異なる。今も創業家が経営に直接関わっているのは竹中工務店。竹中藤右衛門氏が創業して以来、2013年まで5代にわたって竹中家の社長が続いた。2013年に初めて竹中家ではない宮下正裕氏が社長となったが、代表取締役CEOには前社長の竹中統一氏が就任している。
「前社長・竹中統一氏の子息の勇一郎氏(常務執行役員)が当時まだ30代で社長にはまだ早いため、中継ぎで宮下氏に決まったと見られています」(前出・千葉氏)
大林組は初代から3代までの社長を大林家一族が務めた。その後、1989年から現在の7代目までは大林家以外から社長に就いているが、現役員の名前を見ると、代表権を持つ会長を大林家の大林剛郎氏が担っている。
鹿島建設では1990年まで社長を務めた8代目まで、ずっと鹿島家から社長を出していたが、それ以降、鹿島家以外のトップが続いている。