ライフ

ジャーナリスト・東谷暁が選ぶ「憲法を考える本」4冊

 ニッポンの大問題である「憲法」。知的刺激に満ちて抜群に面白い憲法本4冊をジャーナリスト・東谷暁氏が選んだ。

 * * *
 憲法学者の『憲法学』『憲法原論』の類をいくら読んでも、その講義を何度聞いても分かったような気がしない。そもそも、さっぱり面白くない。しかも憲法学者は左派でも右派でもそれは同じなのだ。

 いわゆる主流派といわれる東大系の憲法学者はもとより、傍系の憲法学者の書いたものでもほとんどの憲法学は「日本国憲法は守らねばならない」という点で一致している。呆れたことに改憲を唱えている少数派の憲法学者が書いた本でも、概念の選択や論理の組み立ては護憲派と瓜二つ。

 たとえば、政治学や社会学で、学派がちがっても概念や論理が同じなんてことがあるだろうか。そして繰り返すが、他の社会科学の場合には、希に面白い本もあるが、憲法学に限っては面白い本なんかありはしないのだ。

 護憲派は改憲反対を唱えていればよく、改憲派もポツダム宣言の「自由、平等、人権」を疑っていないのだから、スリルもなく知的刺激もないのが当然だろう。憲法について楽しく考えるには、憲法学者の憲法学以外から、面白い憲法の本を探すしかない。

「護憲派と改憲派双方の欺瞞を批判」
『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』/井上達夫著/2015年/毎日新聞出版
 
 リベラリズムの唱道者が九条の削除を主張したことで注目されたが、井上はすでに十数年前から同じことを論じていた。護憲派と改憲派の双方の自己欺瞞を批判。リベラリズム研究者が改憲を言い出したということより、井上が自らの思想にしたがって首尾一貫した議論を展開していることが素晴らしい。だから、この本は面白いのだ。

「明治憲法の復活を主張。その狙いは?」
『国家とは何か』/福田恆存著 浜崎洋介編/文春学藝ライブラリー/2014年(「当用憲法論」の初出は1965年)

 現憲法は当時の状況の圧力で作られたが、当用漢字が作られた経緯と同じで、だから「当用憲法」なのだという。しかし、現憲法は明治憲法の改正手続きで生まれたのだから、現憲法を廃棄すれば明治憲法が復活する。それを自分たちで改正すべきだと論じた。明治憲法の復活というより、日本人の「憲法意識」の復活を課題としている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン