ライフ

寝たきりなど重篤な後遺症ありうる脳梗塞に「夢の新薬」

患者の負担軽減が期待される(写真:アフロ)

「回復しない病」との呼び名が過去のものになる。

 脳の血管が詰まるなどして血流が低下し、脳細胞が壊死する脳梗塞。発症すると意識障害や片方の手足の麻痺などが起こり、治療が遅れると命を落とすこともある。一命を取り留めても、半身不随や寝たきりなど重篤な後遺症がありうる厄介な病気だ。

 しかも従来、一度損なわれた脳機能は回復しないとされていたが、定説を覆す「夢の新薬」が現れた。日本の再生医療ベンチャー、サンバイオが開発する再生細胞薬「SB623」である。

 製造過程は以下の通り。まず一人の健康なドナーの骨髄液から、多様な細胞に分化する能力を持つ「間葉系幹細胞」を採取する。これを加工・培養して製品化し、脳内に生じた患部の周辺に直接注射すると、脳の「再生」が見込める。

 東京大学医学部附属病院脳神経外科の今井英明特任講師が解説する。

「詳しいメカニズムは不明ですが、移植した幹細胞から分泌される栄養因子が、傷ついた脳の神経細胞の修復を促すと考えられます。損傷した神経細胞の再生そのものは不可能ですが、周辺の神経細胞を活性化することで、失われた脳機能が回復し、患者の運動機能が改善すると考えられます」

 実際、米スタンフォード大などが脳梗塞発症後の患者18人に治験を実施した結果、安全性に問題はなく、ほぼ全員の運動機能が徐々に回復し、1年後も回復状態が維持された。

 例えば脳梗塞を患ったある女性患者は後遺症でほとんど腕を動かすことができなかったが、治験後には腕を頭の上まで上げたり、前後左右に動かせるようになった。

 この女性患者には言語障害があり、食事の注文や人とのオーラルコミュニケーションがうまくできなかったが、治験後には自分の意思を口頭で伝えらえるようになった。

 また、脳梗塞で寝たきりになった別の女性患者は足をほとんど動かせなかったが、治験後には片足をベッドから浮かせられるまで回復した。

 以上の様子は米CBS放送などで「奇跡の患者」として報道された。

 サンバイオの森敬太社長は、過去に『日経バイオテクオンライン』で米国の治験結果をこう報告している。

《歩くことができず車椅子での生活を余儀なくされてきた患者の方が2年ぶりにご自身の足で立ち、ゆっくりながらも歩くことができるようになったなどの運動機能の改善や、または言語機能の改善などが見られ、非常に手ごたえを感じた瞬間でした》

※SAPIO2017年2月号

関連記事

トピックス

ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
綾瀬はるかが結婚に言及
綾瀬はるか 名著『愛するということ』を読み直し、「結婚って何なんでしょうね…」と呟く 思わぬ言葉に周囲ざわつく
女性セブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
やりたいことが見つかると周りがみえなくなるほど熱中するが熱しやすく冷めやすいことも明かした河合優実
大ブレイクの河合優実、ドラマ『RoOT/ルート』主演で感じる役柄との共通点「やりたいことが見つかると周りが見えなくほどのめり込む」
NEWSポストセブン