IQOSは今も品薄状態が続く
◆白く漂うものは煙ではなく水蒸気
アイコスを吸っている人の口元を見ると、ふわりと白い霧のようなものが漂っている。かすかな、コーヒーを焙煎した時のような匂いも。しかし、一瞬で消えていく。「煙ではありません」とフィリップ・モリス・ジャパン合同会社の水越徹氏(40)。
「煙は燃焼した時に出るものですが、アイコスは葉を燃やさずに、加熱しています。火を使わないので灰も煙も出ませんし、紙巻たばこに比べて匂いも少なく残りにくいのが特徴です」
英語で「たばこを吸う」は「Smoke」。だが、アイコスの場合は、「Vape」(=蒸気を吸う)と表現するらしい。いったいどんなメカニズムなのか?
「簡単に言うと、たばこ葉を加熱し葉に含まれる成分が水蒸気となったものを吸うわけです。加熱ブレードは金とプラチナ素材でできていて、ホルダーにはコンピュータチップが入っています。300度、つまり燃焼する温度には決して達しないよう、正確にコントロールしています」
なるほど。「火を使わない」という一点で従来のたばことは全く別物だ。ニコチンは紙巻たばこと同量摂取するが、発生する有害性成分は9割も削減できる、というから驚き。
使い方はこうだ。紙巻たばこのミニチュアみたいなアイコス専用たばこ「ヒートスティック」を、リチウムイオン電池が搭載されたホルダーに差し込む。スティックが加熱ブレードに突き刺さり、ボタンを押すと加熱が始まる。
「紙巻たばこは葉を刻んだものを使っていますよね。しかしヒートスティックの中身は、粉末にした葉をまずペーストにし、それをシートにしてから襞状にして詰めています。ですから、通常の紙巻たばことは異なった製造工程で作られています」と水越氏。シート状の加工にこだわっているのはなぜなのか。
「アイコス専用のヒートスティックを加熱ブレードに刺した時に、たばこ葉に熱が均一に伝わることが重要だからです。たばこ葉の設置面を工夫した結果、シート状にして巻くのが最適と判明しました」
なるほど、聞けば聞くほどアイコスは新しい技術から生まれたたばこだ。マールボロで紙巻たばこ世界シェア1位の座を守ってきた米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)。実は加熱式たばこの開発で試行錯誤を重ね、このアイコスにたどり着くまでは10年以上の時が経過していた。