近頃、ぜんそく患者が増え続けている。2005年の約400万人から2008年には約800万人(非アレルギー性含む)へと倍増した。子供の病気だと思われがちだが、実は大人の患者の方がずっと多い。2014年の患者調査によると、118万人のぜんそく患者のうち、成人が6割を占めている。
認定NPO法人日本アレルギー友の会・事務局長の丸山恵理さん(56才)は自身も小児の頃からアトピーとぜんそくに悩まされてきた。アトピーはよくなったり悪くなったりを繰り返しながら現在まで続き、ぜんそくも1才の時に発症して、15才の頃にいったん治まったものの5年前に再発したという。
「うちの会にはアトピーとぜんそくの成人のかたが多い。アレルギーのために自分に自信がなくなってしまい、就職や結婚に不安を持ってしまったり、遺伝するのではないかと考え、出産を躊躇する人もいます。それほどアレルギー疾患は人生を左右するものなんです」(丸山さん)
ぜんそくは、丸山さんのケースのように、治ったと思っても安心できないのが特徴だ。東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科診療部長・勝沼俊雄医師が言う。
「3才くらいまでによくなっても、思春期になると4分の1弱が再発するといわれています。6才でぜんそくの子は思春期になっても半数が治っていないというデータもある。ストレス、妊娠、感染、喫煙などの影響で、大人になってから再発することも珍しくありません」
ただし、小児ぜんそくから大人のぜんそくに移行するのは2~3割ほどで、大人になって発症するケースがほとんどだと池袋大谷クリニックの大谷義夫院長は言う。
「ピークは40~50代です。風邪を引いた後に発作が残る人が多いですが、ほこりを吸って悪化する人、疲労やストレスが原因で悪くなる人もいます。大人の場合、ぜんそくだとは思わずに発見が遅れて症状を悪化させてしまうケースも少なくありません」
年間約1500人がぜんそくで命を落とす。そのほとんどが大人で、60才以上が9割近くに上る。アレルギーは遺伝するといわれるが、ぜんそくは遺伝だけではなく、ほかにも危険・環境因子があり、突然発症するのも大人のぜんそくの特徴だ。
「大人になってから発症したぜんそくを完治させるのは難しい。のどがヒューヒューゼーゼーと鳴る“ぜん鳴”や呼吸困難などの発作を抑えるために、吸入ステロイドなどの長期管理薬(コントローラー)をベースに、発作が起きたとき用の発作治療薬(リリーバー)を組み合わせるのが治療の基本です」(大谷さん)
※女性セブン2017年3月23日号