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銀座の「目隠しグリル」で熟成肉の微細な世界を体験してみた

細やかに風味を感じる 写真/五感生活研究所

 人間の感覚は、ふとしたことをきっかけに鋭敏になるものだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が注目のレストランをレポートする。

 * * *
 4月20日、銀座エリア最大の商業施設誕生。大注目の中でオープンした「GINZA SIX(ギンザ シックス)」。テーマが「百貨店らしさを変える」というだけあって、吹き抜けの空間には巨大なアートオブジェが。

 草間彌生の作品を森美術館が監修し、期間限定の新作インスタレーションとして展示しているのだとか。つまり、「モノを売る」だけでなく、斬新な「空間的体験」を提供する。それが「GINZA SIX」の特徴らしい。ネットでモノを買う時代だからこそ、そこへ足を運ばなくては味わえないコトを、と。

 そして、もう一つのコンセプトは「New Luxury」。つまり、日本の良き伝統文化や歴史を継承しつつ世界の最先端を取りこんでいくというチャレンジ。例えばかつて渋谷・松濤にあった観世能楽堂が、「GINZA SIX」の地下へそのまま移築されたことも大きな話題になっています。「伝統と革新性が同居する」ような「空間的体験の提供」をもくろんでいる、ということでしょう。

 そして多くの人にとって関心の高い体験といえば、やはり「食」。「GINZA SIX」の中で、私は不思議な味覚体験に提供するお店に出会ったのです。日本初の「目隠しグリルリストランテ」。なんじゃ、それ?

 目隠しをしたまま、熟成肉を味わうレストラン? そこでいったい何が起こるの? どんな「新体験」をさせてくれる? 興味津々、トライしてみることに。

 まずは、手ぬぐいで目隠し。さらに、ヘッドホンで耳を覆う。視覚を遮断し、耳からは、ジュージューと何かを焼いているような音だけが入ってくる。そして、目の前のテーブルにサーブされた(らしい)料理を、手探りでフォークを握り、突き刺して口へと運ぶ。

 噛むと……舌の上には四角い物体。ぐにゅっとゴムのように凹む。舌にぶつかる肉の繊維。柔らかいわりには歯を跳ね返す弾力も。固さ、柔らかさ、歯が食い込む感覚、割れていく繊維……繊細な感じ分けをすること自体、ワクワクして面白い。まさに「目隠し」効果です!

 舌先、口の粘膜で、口の中に入ったものの「質感」を必死に感じ分けようとしている自分に気付く。普段の食事の時は、ほとんどやらないような触覚の使い方。普通におしゃべりしながら食べる時では、感じとれない微細な世界。

 その時、ちょっと焦げたような、芳ばしい匂いが鼻を通り抜けました。なんだか甘い匂いも。そして肉の旨みが、香りとともに口の中に広がっていく。いつより細やかに、風味を感じている自分がいる。

 なるほど、そうなのです。視覚を遮断すると、「別の感覚が活き活きと立ち上がる」ことになる。触覚、嗅覚がぐぐっと目覚めて感度が高くなる。そんな法則を、改めて実感。

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