経営再建中のシャープが台湾の鴻海精密工業の傘下入りから1年も経たないうちに業績を回復してきた。今年3月期決算の業績予想を黒字転換に上方修正し、一時は100円を割った株価は4倍にハネ上がった。
そのシャープで将来、創業家の早川家に“大政奉還”が行なわれるとの見方が浮上している。
同社には創業者である早川徳次の孫でシャープ・エレクトロニクス・ロシア社長の早川誠次氏ら3人の直系子孫が勤務している。3人は今年1月に台北で開かれた鴻海グループ社員向けのイベントに招待され、郭台銘会長は「創業家なのに一般の社員と同じように働いている。なんと清廉なことか。早川家の精神に感動している」と激賞して連れ歩き、「もっと大きな仕事へと異動させる」と大抜擢を示唆したのだ。
イベントには「SHARP博物館」のブースも開設され、徳次氏直筆の「至誠」の文字が展示されていた。
現在、シャープ再建の指揮を執るのは鴻海から派遣された戴正呉・社長だが、戴氏は東証二部に落ちた同社を今年度中に一部に復活させる目標を掲げ、「達成したら社長を退任して日本人にバトンタッチする」と発言している。春節のイベントでも郭会長とともに早川家の子孫たちと行動をともにしていた。
鴻海の郭会長は昨年4月、買収を発表した会見でも、「シャープの100年超の歴史、技術革新のリーダーとして果たしてきた役割を尊敬する。創業者の早川徳次さんの技術革新、勤勉、高潔さは、今でもシャープの社員に息づいている」と述べ、本社近くに早川徳次の記念館をつくることを発表するなど、創業家へのリスペクトを打ち出してきた。『経済界』編集局長の関慎夫氏はこう指摘する。