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コミー元長官の堂々たる公聴会は「さすがFBI」の一言

 二転三転する解任理由に混乱し懸念したと述べた途端、左眉が下がり右眉だけが上り、わずかに左肩をすくめた。この仕草は、理由に納得できないだけでなく、大統領への皮肉や批判を表しているように見て取れる。自分やFBIをありもしない嘘で貶めたと淡々とした口調で述べたが、その視線は鋭く前を見据えていた。この時感じた怒りは、かなりのものだったに違いない。

 そして国民に対して「FBIは正直で、FBIは強く、FBIは常に独立性を保つ」とあごをわずかに上げて、これがFBIの真実だと強調した。大統領の発言を捜査打ち切りの指示と思ったという証言も重要だったし、会話をメモしたという証言も衝撃的だったが、それ以上にコミー長官は、公の場でFBIの名誉挽回をしたかったのかもしれない。

 冒頭証言を終え、チェアマンが「ディレクターコミー(コミー長官)」と呼んだ瞬間、反射的に背筋を伸ばし姿勢を正したのも、FBIのトップに立っていた誇りがあったからだと思う。

 反面、トランプ大統領には懐疑的だったと見える。メモを残した理由を「大統領の性格から、嘘をつくかも」と述べると、肩を下げ、眉も頬や口角も下がった情けなさそうな表情を見せた。自分の上司が、それもトップが嘘つきと確信した時のやるせなさや情けなさは、なんとも言い難い。それが一国の大統領だったのだから、その失望たるや相当のものだろう。

 そんな大統領に求められたという忠誠には、「ロイヤルティー」という言葉を述べながら一瞬、両手の指を2本ずつ上げてクイクイッと曲げた。欧米でよく見る「いわゆる」という意味の仕草だ。忠誠を求められたことに疑問や反発を感じ、忖度する気にはならなかったと思われる。

 ところが証言の最中は、言葉と相反する仕草や矛盾する表情は、まるで見受けられない。公聴会が行われた約2時間40分の間、用意された水を飲んだのは1~2度だけ。質問者が変わろうとも、どのような質問を受けても、姿勢も変わらず、身体が揺れることさえなかった。一瞬、戸惑ったり、言葉に詰まったり、感情がわずかに垣間見えた場面はあったが、コミー氏のボディランゲージには動揺や不安が一切表れなかったのだ。

 それどころか、「大統領に忠誠を求められた際は、自分は動きもせず、口も開かず、表情も変えず、ぎこちない沈黙が続いた」と証言し、フリン前大統領補佐官の件については、大統領が執務室で他の人を人払いした時の状況や、その場にいたセッションズ司法長官の様子について、細かに証言したのだ。他人のボディランゲージを読み、それによって臨機応変に対応を変えている。さすがである。

 FBIの長官までやった人物ならそれぐらい当然なのかもしれないが、訓練されている人間はやっぱり違うなあ。

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