同書にあるスナックに関するデータが興味深い。そもそもスナックが登場したのは1964年ぐらいことで、当時流行していた「深夜喫茶」が風俗上好ましからぬという理由で規制され、その代わりにスナックが登場した。当時は若者が集う最先端の飲み屋で、軽食も提供されることから「スナック」と呼ばれた。
またスナックの軒数は概算10万軒を超えており、不動産屋(12万)、居酒屋(9万)などの業種と肩を並べるというのは意外だ。
スナックが多いのはやはり人口が多い大都市だが、「市区町村での人口1000人当たりの軒数」で比較すると、驚くべきことがわかった。ベスト10に大市町村を抑えて、なんと5位高知県奈半利町(6.21軒)、8位沖縄県北大東村(4.51軒)など小さな町がランクインしてくるのだ。
「奈半利町は漁村です。農漁村と離島は人口比でスナックがやたら多いんですよ」
──荒井紀一郎・首都大学東京法学系准教授による「スナックが多い町は犯罪が少ない」という立論も面白かったです。
「正確には夜間光量が少ない地域では、スナックが多いほど犯罪認知件数が少ない、ということです。新宿のような盛り場では関係ありませんが、盛り場が少ない地域では、スナックの灯りが防犯上役に立っているのはないか、ということですね。昼の図書館、夜のスナックと公共圏として機能しているではないかと思われます」
──だんだんとスナックに行きたくなってきました。初めて行くお店で上手に遊ぶコツはありますか。
「料金はだいたいどこでもセットで3000円くらいです。カラオケを勧められても『もう少しガソリン入れてから』と2回くらい断るのが奥ゆかしい態度です。いよいよマイクを握るときは、曲の履歴を確認して下さい。直前に歌われた曲は避けること。群馬のスナックなら地元の偉人『BOØWY』は鉄板です。曲目の履歴とママの年齢に合わせたような選曲をして歌うこと。自分が歌いたい曲を歌うのではなく、場に馴染む選曲をするのが受け入れられるコツですよ」
同書は好評で、すでに谷口教授は第二段を執筆中だ。