JTたばこ事業本部・EPマーケティング部次長の高橋正尚氏
どうしてそこまで“無臭”にこだわったのか。やはり、非喫煙者への配慮が最大の目的だと高橋氏はいう。
「われわれたばこメーカーとしては、もちろんたばこを吸われる方に支持されることがビジネス上大事ではありますが、『吸う人と吸わない人との共存』を会社ビジョンに掲げてマナー啓発や分煙活動を進めていく中で、たばこを吸われない方から理解を得ることも大事にしています。そのためには、たばこの臭いをいかに抑えるかといった課題には常に取り組んでいます。
紙巻きたばこから発生するにおいは喫煙者でも気にされる方が多くなりました。髪の毛や衣服ににおいがついたり、壁が汚れたりといった不満から、周りへの配慮でプライベート空間でしかたばこを吸えないといった声まで様々いただきます。そういった意味では、プルーム・テックは双方から認めていただける商品だと自負しています」
においの解消によって分断されていた喫煙者と非喫煙者のコミュニケーションが徐々に復活しているという。
「紙巻きたばこの喫煙は禁止されているものの、プルーム・テックは使用できるという場所が増えています。
“No SMOKING.Ploom TECH Only”という表示がある外食店では、席を外さなくてもたばこを吸う方と吸われない方が会話ができると好評ですし、自宅でも換気扇下やベランダが喫煙場所だったのが、普通に食卓やソファで吸えることから家族団らんの時間が増えたと喜ばれる方もいました」(高橋氏)
JTの「煙の少ないたばこ」の開発は今に始まったわけではない。その証拠に、1997年には煙を出さないたばこ『エアーズ』を、2010年には粉末たばこ葉のカートリッジを吸う無煙たばこの『ゼロスタイル・スティックス』、嗅ぎたばこの『スヌース』といった商品も誕生させてきた。
実は販売中のプルーム・テックも2代目で、初代はアイコスよりも早い2013年に発売。世界8か国でも展開していたが、充電時間の長さやにおいの解消などいくつかの難点があり、改善を重ねてきたという。
いずれにせよ、アイコスに加え、プルーム・テック、そしてBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)からは『glo(グロー)』と競合する大手3社の加熱式たばこが出揃ったことで、ブームはさらにヒートアップしていくのは間違いない。そこで気になるのは、従来の紙巻きたばこの運命である。
アイコスを販売するフィリップ・モリスのCEOが、「いずれ、紙巻きたばこの生産をやめる」と発言して大きな話題となったが、このまま加熱式たばこの勢いが止まらなければ、紙巻きが消滅する可能性もある。果たしてJTはどう考えているのか。
「たばこはあくまで嗜好品。ワインでも赤が好きな人がいれば白を好む人もいる。コーヒーでもスペシャリティーしか飲まない人、缶コーヒーを毎日飲む人などさまざまでしょう。
私たちもお客さんに数ある選択肢の中から選んでいただけるラインアップを増やしていく方針です。よって、紙巻きたばこにおいても解決しなければならない技術は引き続き追求していきます」(高橋氏)
嗜好品という観点では、いまの加熱式たばこブームには興味深い傾向もある。