上方落語が存亡の危機に立たされたとき、その窮地を救ったのは、三代目桂米朝、五代目桂文枝、三代目桂春団治、六代目笑福亭松鶴の「上方落語四天王」だ。しかし、いずれも鬼籍に入った。
「せやから、これからだと思いますねえ。これから、また新しい何かが生まれてきそうな感じがあります」
文枝は2006年、大阪の寄席を半世紀ぶりに復活させようと「天満天神繁昌亭」のオープンに尽力した。繁昌亭は今や、上方落語の拠点として定着している。そして、来年7月、神戸新開地に二つ目の寄席をオープンする。
「漫才は、次から次に若い人が出てきて、あれよあれよという間にテレビの人気者になっていく。そんな中、落語はなかなかそうはいかない。一生懸命やるしかないしというか、やらざるを得ない。自分の使命であり、仕事かなあみたいな感じですね。ホント、死にものぐるいです」
湖面を行く水鳥の足を想起した。涼し気な顔をしているが、水面下では、必死にもがいているのだ。
●桂文枝/1943年、大阪府生まれ。関西大学在学中に桂小文枝(故・五代目桂文枝)に入門。深夜ラジオで若者の人気を得て、『新婚さんいらっしゃい!』などテレビ番組でお茶の間に定着。1981年、創作落語を発表するグループ・落語現在派を旗揚げ。2006年紫綬褒章、2007年菊池寛賞、2015年旭日小綬章。
■撮影/林景沢
※SAPIO2017年9月号