佐藤:援交が流行した当時、バブルは弾けてはいたものの「貧困」という言葉はまだ出てきていない。ただし、このあたりから国民の年収が下がり続け、2003年には森永卓郎さんが書いた『年収300万円時代を生き抜く経済学』がベストセラーになった。
片山:それがいまや年収300万円だったらまだいいという時代ですからね。
バブル崩壊の傷の深さを感じさせたのが、破綻した住宅金融専門会社に政府が6850億円の公的資金の注入を決めた1996年の住専問題です。
高度成長期からバブル期までは「良い就職」ができれば生涯安泰という思想が信じられていました。市川崑監督の1960年前の映画『満員電車』では、主演の川口浩が新卒でビール会社に就職するといきなり生涯年収の計算をしだす。そこから何歳で結婚、何歳で持ち家とみんな計算できる。
しかし1997年11月に山一證券、三洋証券、北海道拓殖銀行と立て続けに潰れた。終身雇用の安心感と年功序列の秩序感はあそこで喪失しましたね。