国内

いまさら無修正DVD製造販売業者の摘発が相次いでいる理由

ネットで視聴が主流となってもDVDが根強いジャンルがある

 スマートフォンが普及し、誰でも手軽にインターネットを利用するいま、お気に入りの映像作品はネットで視聴する人が多い。動画配信サービスが充実してきたこともあり、映像ソフト市場におけるDVDなどの販売・レンタルは減少を続けている。ところが、無修正のわいせつ映像ソフトだけは、儲けが確実なビジネスとして今も密かに続いている。今月初めには、毎年2億円以上売り上げていた無修正DVDの製造・販売グループが逮捕された。なぜ、いまだにこれほどの規模でビジネスを続けられるのか、ライターの森鷹久氏が追った。

 * * *
 無修正映像のDVD、いわゆる「裏DVD」を販売していたとして9月7日に大阪府の夫婦が、そして8日には東京都の40代男ら6人が逮捕された。夫婦は23万枚以上を販売し5400万円以上の売り上げを、男6人は6年弱の間におよそ16億円弱を売り上げていたという。東京都の事案では、練馬区の住宅街にあるアパートの一室が、DVDダビングなどの製造工場となっていた。

 この2件の被疑者たちのビジネスに対するスタンスは対照的だ。男6人は、摘発逃れのためにホームページ販売をせず、独自の顧客リストを作成し、会員のみに販売していたという筋金入りの”裏業者”である一方、夫婦は「会社が倒産し借金返済のためにやった」と供述するなど、素人の所業であることをうかがわせる。

「裏DVD製造は、とにかく元手がいらず儲かる。足さえ付かなければデカいシノギだ」

 筆者にこう語ったのは、かつて埼玉県内の“工場”にて裏DVDを製造していた自称“工場長”。“工場長”はフリーのシステムエンジニアだと自称する中年の男で、ダビング作業などを担当する“工員”は20代から40代までのフリーターや無職の男性3人だったが、ある日突然「オーナー」からの指示で解散を余儀なくされた。工場長は「オーナーの話はしない」と頑なだが、“ビジネス”の話については、よほど儲かったのか、懐かしむように饒舌に話す。

「裏DVD製造って言っても、俺たちが映像を撮影し編集するわけじゃない。ネットからダウンロードして、DVDに焼いて売るだけ。DVDなんて一枚10~20円でしょ。それを一枚三千円とかで売るわけだから、利益は半端ない」

 冒頭で紹介した逮捕業者らも”工場長”のように、ネット上に違法に開設された無修正アダルトサイトから、これまた”無断”で映像をダウンロードし”無許可”でダビングし販売していたと見られる。そもそもの映像が違法なものであり、さらにそこに違法業者が乗っかるという、まさに違法が違法を呼び込む負のラビリンス状態が形成されているのだ。工場長によれば、自身が関わった5年間の間に、10億円以上の売り上げがあり、自らの報酬も5千万円を超えたというから、まさに笑いが止まらなかった。なのに、なぜ廃業に至ったのか。

「映像は、有料の無修正サイトから勝手にダウンロードしていました。ダビングしたDVDはネットを使って販売していましたが、同業者がポツポツ摘発されるようになったんです。また、有料サイトの映像が、中国系の無断転載サイトに飛べば誰でも簡単に見られるようになったのもある。ネットの知識がある人はそっちで見ちゃえば済むし、パクられる危険性が高くなった。俺らが捕まれば反社(反社会勢力=暴力団)である上までヤバい。それで手を引いたのかなと」

関連キーワード

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン