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西郷隆盛は西南戦争の主体でもない上に本意ではなかった

征韓論争に西郷らは政府の職を辞した(楊洲周延「征韓論之図」) AFLO

 江戸無血開城の立て役者となった西郷隆盛は、その後、征韓論争に敗れ、薩摩へ帰郷した。そこでは新政府に不平を持つ士族たちを集め、明治7年に私学校と総称される軍事学校を設立した。『西郷隆盛伝説の虚実』の著書がある歴史家の安藤優一郎氏が語る。

「西郷の設立した私学校は、郷里に帰ってもすることがなく、士風が退廃し始めた兵士を統率するためのものでした。政府側からすると旧薩摩藩の軍事力を西郷が掌握したように見えたのでしょう」

 その後、廃刀令などに不満を持つ士族たちの反乱が各地で連鎖し、頻発していった。そして明治10(1877)年2月、遂に西郷は挙兵。日本史上最後の内戦となる西南戦争が勃発した。

「西郷挙兵の引き金となったのは、捕えられた政府派遣の警察官が供述した西郷暗殺の密命です。この供述は西郷を慕う士族を激昂させるには十分でした。遂に西郷の抑えもきかなくなり、担ぎ出されてしまう。

 西郷は自らクーデターを起こそうとしたわけではなかったが、西郷軍は朝敵となった。政府軍の総攻撃目前に、西郷麾下の河野主一郎と山野田一輔が政府軍総司令官の一人、川村純義に面会を求め、西郷の助命を嘆願しています。部下に慕われた西郷ならではの逸話でしょう」(安藤氏)

 助命嘆願は叶わず、西郷は「晋どん。もうここらでよか」と別府晋介に介錯を頼み、西南戦争が終結する。

 その12年後、明治22年、西郷は大日本帝国憲法発布の大赦により正三位が贈られ、名誉が回復されている。

◆取材・構成/浅野修三(HEW)

※SAPIO2017年10月号

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