【著者に訊け】
のぶみさん/『このママにきーめた!』/サンマーク出版/1296円
【本の内容】
〈世界をよくするのは、ママがどれだけよろこぶかにかかってるんですよ〉。これは「あとがき」にある言葉だ。のぶみさんが胎内記憶のある子供たちに会い、話を聞いて本書は生まれた。子供は母親を喜ばせたいという一心で生まれて来たのに、母親は子供をつい叱ってしまいがち。しかし、本書を読むと、目の前の子供の一挙手一投足がいっそう愛おしく感じられるように。プレゼントにもオススメだ。
生まれる前の赤ちゃんたちが雲の上から町を見下ろして、どのママのところに行こうかと考えている。『このママにきーめた!』は、少しぐうたらなママと、そのママを選んで生まれてきた赤ちゃんの物語だ。
「あるサイン会で、ママのお腹の中にいる時のことを覚えている子に会ったんです。チャポンチャポンしていて、グルグルしたヒモみたいなもので遊んでいたと言うんですけど、とても作り事とは思えなくて」
妊娠中や出産の記憶がある子供は日本でも海外でも報告されている。のぶみさんはこうした胎内記憶を持つ2~4才くらいの子供、約100人に話を聞いた。すると、いくつもの共通点が見えてきた。雲の上など、上のほうから見て母親を選び、お腹に入ったこと。そして、ほぼ全員が、「ママを笑わせるため」、「ママが泣いていたから」など、「ママを喜ばせるために生まれてきた」と話したのだ。
「ママはいい子に育てようとして、つい怒ってしまうけど、本当は子供のすることを喜ぶのが大切。ママが喜んでくれたら他の人も喜ばせようと思うでしょ。そうすれば世界はよくなっていく。人は人を喜ばせることがいちばん幸せなんじゃないかな」
自身も人を喜ばせるために絵本を作っているという。
面白いのは赤ちゃんの目線で描かれていることだ。出産シーンも力んでいる母親ではなく、暗く狭い産道を必死で進む胎児が主人公。出産は母親だけが苦しいのではなく、赤ちゃんも相当がんばって出てくるらしい。
この絵本は発売1か月で8万部を記録した。のぶみさんには過去にも『ママがおばけになっちゃった!』など何冊ものヒット作がある。従来の絵本作家と違って、母親と子供がどうしたら喜ぶか、多くの人に話を聞いてニーズをつかみ、コンセプトを決めて作品を作る。たとえば、子供が好きな笑いの要素を入れ、親しみやすい会話文を多くする。さらに飽きないように15個の見開きで5分以内に読み終わるようにしている。
『このママにきーめた!』のサイン会では妊婦さんが列を作った。胎児が会いにきてくれたようでうれしかったと、のぶみさんは笑顔を見せた。
撮影/五十嵐美弥、取材・文/仲宇佐ゆり
※女性セブン2017年10月19日号