また、一般的にビジネスタレントの中には銀行・証券系のシンクタンクの主任研究員や調査部チーフアナリストといった肩書きで登場する人も多い。あるいは総合商社の大手メーカーの総合研究所や経営研究所主幹研究員という肩書きの人もいる。じつはこういう人たちのほとんどは専門職の社員であり、親会社の出向組などすでに出世の道から外れた人も少なくない。
しかも所属は親会社の関連会社であり、そのトップは親会社を外れた役員の天下り先になっている。彼・彼女らは文字通り、会社のタレントであり、研究発表やどれだけメディアに露出したか、それによってクライアント企業の受注を獲得したかで評価される。当然、実績が高い社員はヘッドハントされて転職する人もいる。
だが、彼らに課せられたノルマは厳しく、実際にシンクタンクの有名研究員だった人を知っているが、日々忙しく対外的に有名な割に報酬が少ないことを嘆いていた。
他の同僚もクライアント先のコンサルティングと並行して目新しい分析や研究発表しなければならず、長時間労働させられながら苦労している人も少なくない。有名研究員は結局、他のシンクタンクに転職してしまったが、もちろん親会社にとっては痛くもかゆくもない存在でもある。
対外的には有名なビジネスタレントも一社員である以上、決して充実した楽しい生活を送っているわけではない。会社によってはタレント化して有名になりすぎると、「あの出しゃばり男は何だ!」と、本当の会社の顔である社長の機嫌を損ねる存在にもなりかねない。