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タレント社員が出世頭とは限らない 本命は温存する会社も

 だが、最近は業種や企業規模にもよるが、あえて社員を表に出す企業も増えている。

 社員を露出させるようになった背景にはビジネスが多岐に渡り、社長や役員では対応しきれなくなったこと、幹部社員候補の早期選抜制度などで優秀社員が社内に見える形で認知されつつあること、会社と社員の関係が変わり、滅私奉公というより社員が自らキャリアを選んで自己成長することを推奨するようになったこともあるだろう。たとえば培ったキャリアを武器に本を出版する副業を容認する企業も多い。

 あるいは最近では女性活躍推進やワークライフバランス推進など世の中の関心に合わせて、リクルート対策や企業イメージの向上策として象徴となるタレント社員を露出させるところも多い。

 ただし、タレント社員の多くは会社のお墨付きを得ているとはいえ、広報部や人事部などの監視・監督下に置かれていることを忘れてはならない。対外的な出演依頼に対し、誰を出すかを慎重に吟味し、決して会社の評判を落とすことがない人物が選ばれる。

 たとえば新製品発表会や新規事業の成功モデルとして顔を出す社員は、一言で言えば「話がうまい社員」だ。

 専門分野に熟知していることはもちろんだが、プレゼンやコミュニケーションスキルに長けている社員を選ぶ。研究開発者の中には実際に研究をリードし、研究者としては優秀なのだが、話し出すと何を言っているのかわからない口下手の人もいる。研究開発力は劣っていてもその人に代わってうまく説明できるスピーカー的存在が適任ということになる。

 もちろん会社としても広報担当ぐらいにしか考えていない。テレビ局で言えばスクープを取った敏腕記者ではなく、その内容を伝えるアナウンサーみたいな存在だ。

 会社を代表して登場し、専門的な技術をわかりやすく伝え、しかも高学歴であれば聴衆の誰もが「あの人は会社の中でも期待されている出世頭なのだろう」と思ってしまう。だが、実際はそうでもない人が選ばれることがある。

 大手製薬メーカーの人事担当役員に「会社が本命視している優秀な社員は表に出すことはしない」と聞いたことがある。

「たとえば行き詰まった関連会社の再建を担う人材や本社が主催する事業部のエリートを集めた研修会に一番優秀な人物を参加させない傾向がある。出してくるのは2番手、3番手の社員が多い。

 なぜなら、もし関連会社の再建に失敗したら経歴に傷がつくことになる。結果的に将来の役員候補の芽もつぶれてしまう。本社の研修会でも失敗し、恥をかくようなことがあれば二度と浮上することはない。2番手、3番手が失敗してもトップの1番手を温存できればよいと考えている事業部のトップも多い」(人事担当役員)

 そうであれば、もし失言すれば会社の評判を落としかねない舞台に事業部の将来を背負って立つ人物を出すことはしないだろう。とくに大企業ほどそう考える可能性が高いし、出してくるのは本命ではないが、見栄えの良い社員ということになる。

 あるいは全社的に幹部候補の育成に注力している企業では、エリート社員を研修の座学と並行して外資系など他の企業と合同で開催しているアメリカの有名大学院の講座に参加させている。英語での授業や研究発表を通じて他社のエリートと競わせる“修羅場の経験”をさせることが狙いだ。

 会社にとっては将来の幹部候補の資質があるかどうかを見極めるための試金石となるが、その一環として外向けのタレントとして送り出す企業もあるかもしれない。それをうまくこなし、評価を高めることができれば将来は有望だが、もし「彼は説明能力に欠けるし、人をリードする力がない」という烙印を押されると、出世の階段から降ろされる可能性もある。

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