少子化や東京一極集中などにより、経営悪化に陥る私立大学が増えている。そこで、大学再編を促す文部科学省が打ち出しているのが、“学部の切り売り”だ。一般企業でも不採算部門を他社に売却して生き残りを図ることは珍しくないが、果たして私大の「延命策」は効果が見込めるのか。「大学通信」ゼネラルマネジャーの安田賢治氏が解説する。
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いよいよ大学が恐れる2018年を迎える。来年から少子化がより一層進み、今年、約120万人だった18歳人口が徐々に減り、2024年には約106万人にまで減る。大学にとっては学生募集がさらに厳しさを増すため、2018年問題と恐れられているのだ。
少子化の影響はすでに表れており、今年の私立大の定員割れは、約40%に達している。2016年に判明しているデータで見ると、まだまだ人口の多い1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)でも約3割の大学が定員割れだ。学生数が定員の5割に満たない大学は5校もある。今後、私立大の淘汰が進むことは間違いないところだ。地方では大都市圏よりはるかに早く少子化が進み、定員割れしている大学は多い。
その中で、生き残り策のひとつとして、地方では私立大の公立大化が進んでいる。地元の自治体が出資して設置し、民間が運営する公設民営方式の大学が公立大に代わっていっているケースが多い。
この方式に限らず地方の私立大が公立大に代わるケースは増えている。大都市圏に比べてはるかに早く少子高齢化が進む地方にとっては、18歳から22歳の若者が集まる大学は魅力的だ。地元には少ない若者が集まってくるからだ。
しかし、定員割れしていると、大学経営は続けられない。大学は定員を満たしてはじめて経営が成り立つ仕組みだ。当然そのような地方の私立大は存続が危ぶまれるが、地元が手を差し伸べ、私立大を公立大にすることで生き残りを図っているのだ。公立大に変わると学費が下がり、難易度は上がる。学費の安い国公立大は人気が高い。つまり安くなって、難しくなるのだ。
例えば、2016年に公立大となった福知山公立大(京都)は、初年度の志願者数は前年の成美大時代の志願者数から21.5倍に激増している。来年も諏訪東京理科大(長野)が公立諏訪東京理科大に変わる。しかし、これは地方の大学でのこと。大都市圏では無理だ。
そんな中で検討され始めているのが、大学の学部を譲渡できるという案。2019年度中に整備されるという。今までは、大学を経営する学校法人同士の統合でないと認められなかった。大学を経営するのが学校法人で、その中には付属校なども含まれている。
近年では慶應義塾大と共立薬科大、関西学院大と聖和大、上智大と聖母大が統合した。いずれもすんなりとはいかず、やはり歴史のある学校法人同士が統合するのは並大抵ではないことが明らかになった。