北朝鮮の核ミサイルをはじめ、国際情勢は緊迫度を増し、国内においては政局がめまぐるしく変化している。混迷を深める現代に、偉人たちが残したメッセージは多くの示唆を与えてくれるはずだ。落合信彦氏が、イギリスを救った稀代の政治家、マーガレット・サッチャー元首相の言葉を紹介する。
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1970年、ヒース内閣で教育大臣に就任したサッチャーは、それまで学校で7歳から11歳までの児童に無償配布されていたミルクの提供を大幅に縮小した。膨らむ一方の公的支出の削減に迫られたやむを得ぬ決断だった。このとき世論やマスコミは彼女を「ミルクスナッチャー(牛乳泥棒)」と非難した。しかし、彼女が志向した「小さな政府」がその後、イギリスを英国病から救い、立ち直らせたことは論を俟たない。
結果的にサッチャーが首相の座を退くことにつながる「人頭税」(納税能力にかかわらずすべての国民に同額の納税を課す)の提案も、イギリスが将来にわたって繁栄を続けるためには必要不可欠との信念があったからこそだった。彼女は人頭税の提案をまったく後悔していないことをインタビューで語っている。
「これまであまりに多くの人々が要求だけはする、しかし、それに対しての支払いは一切したくないという姿勢を取ってきました。甘えの構造のほかなにものでもありません。この構造を断ち切るために作られたのがコミュニティ・チャージ(人頭税)だったのです。(中略)次の選挙を考えてあの法案を作ったのではなく、あくまで10 年、20年先のわが国にとって良しと信じて行ったことなのですから」