カナダのカーリングゆるキャラ「スライダー君」(撮影:竹田氏)
ちなみに、日本にカーリングが上陸し、国内初のカーリング専用ホールとなった前出の常呂のホールには、当時使っていたお手製ストーンが今も展示されている。当時はまだ予算もなく、カナダやスコットランドからの流通も十分に発達していなかったため、適当なサイズのドラム缶をくり抜いてそこにセメントを流し込んでストーンを作ってプレーしていた。先人たちの知恵と情熱には脱帽だ。
余談ついでに書いてしまうと、世界選手権レベルのビッグ・タイトルになると、大会オフィシャルショップでボールペンやTシャツ、ステッカーやピンパッヂなどの定番記念グッズとともに、ストーンが販売されていることも少なくない。2015年には札幌で女子の世界選手権が開催され、その時にもストーンが10万円で販売されていたが「さすがに売れなかった」と担当者は苦笑いしていた。昨年4月の男子の世界選手権(カナダ・エドモントン)でも1000カナダドルで同じくストーンが販売されていたが、最終日まで残っていた。いずれもガチの競技で使われているのと同様のものであるが、さすがにストーンを購入する酔狂なファンは少ないようだ。
話を戻すと、当地の協会主催大会やイベントなどでは各ホールで所有する石が使用される。その一方、日本選手権やオリンピックトライアルなどのJCA(日本カーリング協会)主催の大きなタイトルは、公平を期すなどの理由で専用の石が使われる。
いま、JCA内で10数年ぶりにストーン買い替えが検討されているが、当然の流れだろう。重さ20kgのストーン同士がぶつかり合い、年に何百投も使われると磨耗してゆく。もともと繊細な石な上に、使われ方によっては偏りが生まれるため、どうしても各ストーン特有のクセが生じてくる。
そしてそれこそがカーリングのチーム戦術のひとつでもある。
ストーンはすべてナンバリングされているために、「Bシートの4番と7番は曲がらない」などと、まずはチームで共有する。クセがあり挙動の予測がつきにくいストーンを得点に直結し最後に投げるスキップに残すわけにはいかないので、どうしてもフロントエンドといわれる、リードとセカンド(最初に投げる選手と2番目に投げる選手)で処理しなければならない。いわば“荒れ石担当者”が必ずどのチームにも存在するのだ。