明治維新から150年。明治時代は、現代の日本では当たり前となったスポーツが定着した時代でもあった。スポーツの“明治はじめて物語”を紹介する。
●柔道
今日の柔道は、明治15(1882)年6月に、嘉納治五郎が永昌寺(東京都台東区)の一角に道場を立ち上げたことから始まった。日本古来の武術である柔術は文明開化により省みられなくなっていたが、嘉納は、単に相手を倒すために鍛錬する技術でなく、稽古を通じて精神の修養に努め、人格形成の道を示すという教育的側面、段位制なども取り入れて大刷新。「術」から「道」へと変えて柔道を創り上げた。
道場への最初の入門者は9名。仏壇の位牌が倒れ、屋根瓦が落ちるなどあまりに激しい稽古だったために永昌寺から苦情が相次ぎ、1年で引っ越しを余儀なくされたという。
明治20年代に入ると柔道を学ぶ者が急増する。大学や中学校で柔道の授業が行なわれるようになったほか、警視庁で警察官の育成課程として柔道が採用されたことも急増のきっかけとなった。また、明治22(1889)年に嘉納がヨーロッパで披露したことを契機に、柔道は世界でも認知されるようになり、外国から柔道を学びに日本を訪れる者も現われている。
●野球
日本に野球が伝えられたのは明治5(1872)年。アメリカ人教師のホーレス・ウィルソンが東京大学の前身である東京開成学校の生徒にベースボールを教えたことをきっかけに、全国に広がっていった。東京開成学校は明治29(1896)年に初の国際野球試合も行なっている。相手は本場アメリカ。野球の歴史が浅い日本人では歯が立たないと思われたが、結果は29対4でまさかの圧勝。この勝利が野球ブームの火付け役となった。