ファミリーマートと西武鉄道の駅ナカコンビニ「トモニー」
さて、残る争奪戦だが、私鉄で言えば東は京王電鉄、西は阪急阪神ホールディングスが残っている。このうち、阪急阪神HDとは兄弟会社といえる、H2Oリテイリングがセブン&アイHDと2016年に提携した。
H2O陣営のSポイントを西日本エリアのセブン-イレブンで使えるようにする項目も盛られたので、その縁で阪急、阪神の各沿線もセブン-イレブンにとっては手を組むチャンスだが、セブン&アイHDとH2Oの提携が以後、あまり進んでいないのが現状だけに先行きはやや不透明ではある。
そして、鉄道会社の提携先としてはある意味、コンビニ大手3社の垂涎の的といえるのが、JR東日本である。同社の路線距離は地方都市まで伸びているのでかなり長いものの、ドル箱で金城湯池ともいえる山手線や中央線等々、多くの乗降客数を持つ駅を東京都心や都内近郊に抱えているからだ。
ただ、JR東日本との提携は一筋縄ではいかない。何より、JR東日本にもNewDaysというコンビニがグループ内にあるほか、ルミネ、アトレ、ステーションビル、エキュートなど多くの商業施設を運営している。このほか2010年には高級スーパーの紀伊國屋を買収しており、これらの総売り上げのスケールは、大手小売業も顔負けのボリュームがあるからだ。
ゆえに、JR東日本は簡単にはコンビニ大手からのラブコールには応じないだろう。ほかの鉄道会社であれば、駅売店や自社コンビニでは競争力が弱く、コンビニからのオファーは渡りに船だから、提携までもっていくのは条件が折り合えば、そう難しくはないはず。
が、JR東日本はそうはいかない、難攻不落の相手なのである。前述のNewDaysは、店舗数は1000にも満たないものの、1日の平均日販はファミマやローソンを上回り、セブンに次ぐ日販金額だといわれている。
ただし、店舗数の規模や商品開発のノウハウ等々では正直、NewDaysよりも大手コンビニ3社に軍配が上がる部分は多いと目される。だから、JR東日本がたとえばセブン-イレブンと提携した場合、NewDaysよりも日販金額はさらに上がるかもしれない。
一方で、鉄道会社が自前でコンビニを運営していくのに比べて、既存コンビニのフランチャイジーとなると、ロイヤリティの徴収額もそれなりに大きいだけに、鉄道会社がそれほど潤うというわけでもない。
ともあれ、ほかの鉄道会社に比べて、JR東日本はいわば別格の存在である。セブン-イレブン、ファミマ、ローソンの大手3社のどこがJR東日本と組むのか、あるいはこのままJR東日本が自前主義を貫くのか、興味は尽きない。
●文/河野圭祐(ジャーナリスト)