結納や結婚式などのご祝儀袋の飾りとしておなじみの『水引』。よく目にする結び方は、解くことができない『結びきり』や、あわびに見立てた『あわび結び』などと呼ばれるものだが、なかには鯛や花など、豪華絢爛な立体水引もある。これらの技術は、石川県金沢市で生まれたものだ。
「水引は、飛鳥時代に遣隋使として中国に渡った小野妹子が持ち帰ったものと伝わっています。ほどけない結び方をすることから“縁を結ぶ”ものとして、贈答シーンで長く使われてきましたが、日本のマナーとして定着したのは明治後期。それまでは、平面的なものが主流でした。大正4年、結納業を営んでいた津田左右吉が立体的な水引を考案。これが『加賀水引』と呼ばれるようになり、全国的に広まっていきました」(津田水引折型五代目・津田六佑さん・以下同)
贈答品を美しく“結ぶ”だけでなく、紙でふっくらと華やかな形に“包み”、贈る理由や気持ち、名前を“書く”ことで、加賀水引は完成される。折り方や結び方に合わせて、書体から選んで文字をしたためることで、日本人ならではのおもてなしの心を込めているという。
最近では種類も増え、桐の箱を梅のくす玉の形の水引で結び、100種類の書体から選んだ“寿”を書いたもの(写真)や、鶴と亀を施した酒樽飾りの『家内喜多留(やなぎだる)』などの結納の品や、結婚式などおめでたい席で飾られる『にらみ鯛』に加え、上品な魅力の『椿のかんざし』や、もはやアート作品のような五月人形の『水引甲冑』まで作られている。
最近では水引の魅力を身近に感じてもらおうと、ネックレス作り体験も行っている。
「アクセサリー作りは、水引の基本である『あわじ結び』で行います。水引の意味などを説明しながら、100種類以上の紐の中から好きな色を選んでもらって、アクセサリーを作ってもらうのですが(1人1000円~)、皆さん、楽しそうですよ」
細い糸を結んでいくごとに、愛着がわいてくる水引細工。そこには、人と人を結ぶ優しさが込められている。
※女性セブン2018年4月26日号