ライフ

山崎正和氏 シェイクスピアが無限の栄養源となった

劇作家・評論家の山崎正和氏 撮影:藤岡雅樹

 名を馳せた人物の「我が人生の書棚」は気になることだろう。ここでは劇作家・評論家の山崎正和氏が語る「我が人生の書棚」を紹介する──。

 * * *
 私の家系は代々蘭方医で、父親は生物学者です。そうした知識人の家系にもかかわらず、私は子供の頃、父親から一貫して「本を読むな」と教育されました。

 私はどういうわけか、小学校3年生ぐらいから本を読むのが好きで、小説家の野上彌生子が訳した『アルプスの山の娘(ハイヂ)』などをむさぼり読んでいました。といって文学少年だったわけではなく、『子供の科学』という雑誌なども好きでしたね。いわば「本に淫している」子供だったので、父親はこのままだと私が変な人間になってしまうと心配したのでしょう。加えて、時代性があったと思います。私の小学生時代は軍国主義の真っ只中です。しかも私は5歳の年(1939年=昭和14年)から14歳の年(1948年=昭和23年)まで満州にいたのですが(途中一時帰国)、戦前の満州は日本にとって対ソ連の最前線。そういう世界で一番よろしくないのが「文弱」で、私は非国民であり、反時代的な存在だったのです。それで、父親が「本を読むな」と。

 しかし、そう言われて、私はますます本好きになりました(笑)。

 その後、敗戦になり、国民党政府によって満州に留め置かれているうちに、父親が病気で倒れてしまいました。私は学校から帰ると、父親を看病する以外やることがありません。そこで父親の本棚にあった坪内逍遙訳の『新修シェークスピヤ全集』(中央公論社)【1】を読み始めたのです。敗戦の2年後、私が中学1年生の年です。私はシェイクスピアも坪内逍遙も知らず、戯曲というジャンルがあることすら知りませんでしたが、読み始めたら面白く、1函2冊入り、全20函を片端から読みました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン