アンジオテンシンIIは8つのペプチド(アミノ酸の化合物)からできており、B型肝炎コアウイルス(ウイルスを取り除き、枠だけになった遺伝子)にアンジオテンシンIIのペプチドを埋め込み、ボール型にして抗体を作りやすくする。その流れでDNAワクチンを注射すると体内でアンジオテンシンIIの働きが抑制される。
実験用の高血圧マウスとサルに投与したところ、血圧抑制効果が半年から1年継続することが確認された。その結果を受け、今月からいよいよ人間に対する治験がオーストラリアで始まった。
「高血圧患者24人を対象にワクチン濃度を低用量と高用量の2群に分け、それぞれ実薬とプラセボを投与します。オーストラリアで最初に治験を行なうのは、白人から有色人種まで多彩な民族がいるためで、民族差による薬の有効性を比較できることも大きな理由です」(森下教授)
治験はワクチンを1回注射後、1か月後にもう1回注射し、その後2か月目、4か月目、6か月目での血圧の変化と薬の効果の持続期間などを確認する。安全性と有効性が確認できたら、次は数百人規模での治験を日本で行ない、保険承認を目指す予定だ。毎日の煩わしい服薬から解放される日も近いかもしれない。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2018年6月8日号