親が老人ホームに入居するとき、不安なのはもしも何らかの事故が起きたら、ということだろう。施設内で起きる出来事は、外から窺い知ることが難しいからだ。まして、自分が入居するとなれば、その心配はなおさらである。
どの施設でどんな事故が起きているのか。その情報は老人ホーム選びにおいて、重要な判断材料となるはずだ。ところが管轄する厚生労働省は、「そんな調査は行なっていない」という。いったいどうなっているのか。
そこで本誌・週刊ポスト取材班は、ジャーナリストの末並俊司氏とともに、国に代わって「介護付き有料老人ホーム」の事故件数に関する聞き取り調査を行なった。
介護付き有料老人ホームは設置の際に所定の都道府県、その県の老人ホーム数が多い場合は、政令市または中核市のいずれかに届け出る。届け出を受理し、指導監督を施設に行なう全国112自治体が今回の調査対象だ。該当する老人ホームの施設数は3775施設(届け出が完了している2016年度時点)、定員数は45万7918人に上る。
調査の結果、突出していたのは神奈川県と横浜市の事故報告数だ。神奈川県は横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市以外の県内にある有料老人ホームの事故報告を受理している。調査対象の事故総数は1994件。うち死亡が8件。
驚くべきことに、横浜市は事故件数2100件(死亡数に関する返答はなし)でさらに上回る。ただし、件数が多いからといって、これらのエリアの施設が“危険”だと決めつけるのは早計である。