事故件数が突出している第一の理由は施設数の数だ。神奈川県が指導監督する有料老人ホームは168施設、横浜市は176施設ある。

 本アンケートの対象となる施設の数は全国平均で1自治体34ほど。神奈川県と横浜市の両自治体が抱える施設はその約5倍だ。分母が大きくなれば、報告数もそれだけ増えるだろう。

 第二の理由として介護評論家の佐藤恒伯氏は“自治体の姿勢”を挙げる。

「神奈川県や横浜市は介護政策に対して先進的な取り組みを行なっている自治体として知られています。リハビリの実施で介護度が下がれば施設に対してインセンティブを支払うといった政策などを神奈川県は国より先に始めています。そのため“事故”と判断する基準が厳しい。私もかつて神奈川県内の施設で働いていましたが、利用者のビタミン剤の飲み忘れを事故として報告していました」

 神奈川県内の施設関係者も次のように話す。

「私の施設では入居者60人に対して、2か月に一度くらいの割合で事故報告しなければならない事案が発生します。利用者が神奈川県ではない自治体に住民票がある場合はそちらにも報告します。こうした事故報告は、施設内はもとより自治体全体で共有し、事故を少しでも減らすための材料にしている」

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