今回の事件における犯行グループ結成の呼びかけには、「簡単に稼ぎたい人、連絡ください」といった、実に気軽な言葉が投げかけられていたという。ちょっと変わったアルバイトと受け取ることもできなくはないが、そもそも、こんなところで高額報酬が約束されることそのものが不自然だ。最先端技術に興味があるような企業が運営していれば、AIによって書き込み内容を網羅して、自動的に削除や閲覧不可能などにする対応も考えられるが、残念ながら地域密着型掲示板の運営は、細やかな対応は後回しにしているようだ。
さらに、この掲示板で目立つのは、全体的に発言するユーザーの「リテラシー」が低いことだ。いったんネット上に書き込んだ情報は、すぐさま転載されることも含めて二度と消し去ることができず、問題の書き込みが誰のものによるかは、捜査となればすぐに特定されるのが当たり前の時代だ。にもかかわらず、犯行予告や名誉棄損にあたる書き込みが毎日、毎時のように行われる。書き込む側のうかつさにあきれるばかりだが、その数があまりに多すぎて運営側の対応が追いつかず、結果として見過ごされている。そのため、警察関係者は、浜松の事件をきっかけに、これら掲示板の監視体制を強めなければならないと話す。
「犯罪行為を匂わせる書き込みがあまりにも多すぎます。今回のように違法な仕事の募集や薬物の売買を誘う書き込みが後を絶たない。実際に仕事をするに至ったのか、薬物の取引が行われたのかは追跡しないとわかりませんが、今後は書き込みをした時点でマークしていかないと悲惨な事件が起こる可能性があります。ツイッターやFacebookなど、多くの人に見られて誰かが通報する、といった仕組みがない地域密着型掲示板は、公の場にも関わらず、非常に見えづらい、闇の空間と言えます」
かつて世間を震撼させた「闇サイト」は、ユーザーが特定の意図を持つか、興味を持ってアクセスしなければ決して目にすることはない場所にあった。しかし今回の事案にあっては、誰でも気軽に見られる開かれた掲示板上で、堂々と犯罪仲間が集められ、そして実際に事件が起きてしまったのだ。
いま、件の掲示板を覗いてみると、事件後にも「高収入仕事あります!」「援助してくれる男性募集」「パチンコの打ち子日給2万保障」などといったあやしい内容の書き込みが、相変わらず多く投稿されている。このような書き込みに反応し、リアルに落ち合って犯行に至るケースが存在するとは思っていなかったが、現実は違うようだ。ネットでよくあるネタ、掲示板を見る人にウケることだけ狙った嘘だと誰もが思っていただろうから。こうした現実の存在を受け止め、面倒でも一つ一つにしっかり対処していくしかない。