『曽根崎 松浦商店』は、大阪ステーションシティや大阪駅前ビルといった超巨大ビルがそこここに林立する梅田、曽根崎界隈にある。
そんな中にあって、こちらの店は2代目店主の松浦知弘さん(44歳)が、自ら「うちみたいな狭い店、よそにはないんじゃないですかね」と言うほどで、角打ち女子などを連れて行ったら思わず、かわいいーっと叫んでしまうほどの狭さ。
しかし、常連客の間では、「10人も入ったらもう身動きとれへん、ちっさな酒屋やけど、ここで飲んでるとほんわかするんよ。こんな店があるってことが大阪のええとこや思う。わしらの酒屋さん、頑張ってはるわ」、「初めてのお客さんがいても、店に入った瞬間から、袖すり合っちゃうわけですよ。すぐに仲良くなれて、おいしい酒を一緒に飲める。狭いからこそです」と、強烈に支持されている。
面積は狭隘(きょうあい)でも、逆に広い心で迎えてくれるというわけ。
両親(嘉弘さん・82歳、眞知子さん・76歳)が同町内にあった曽根崎公設市場で松浦商店を始めたのが昭和42年。しかし、再開発計画によって市場が閉じられることになり、3年ほど前にこの場所へ移転してきた。
「それまでの店は酒屋専門で、角打ちはやっていなかったんです。でも、新しい場所に移って、酒屋だけでやっていけるか不安だったし、自分としては以前からやりたいと考えてもいたんで、思い切って(角打ちを)始めたわけですよ。しかしね、店全体で4.9坪、お客さんの角打ちスペースが3坪しかない。この狭さが実は大きな心配ネタだった。ところが、それが、皆さんに愛してもらえる理由になっているみたいなんです。このあたりには、酒屋がやっている角打ちの店はないっていうのもよかったのかな」(知弘さん)
「お母(か)ん(眞知子さん)が店に出る水曜日には、必ず来るようにしています。話ができるだけで、ほかの日以上にほんわかできちゃうんですよね。そんな人が何人もいて、水曜日の顔が揃うと、つい1杯が2杯、2杯が…って感じになるんです」(50代、コンサルタント業)
「狭いのはあかんとか言う同僚を連れてきたことがあるんやけどね。今じゃ、『この店には、いらない物はない、いる物しかない。だからこその狭さなんやなあ』なんて言って、毎週来ているようです。引退したはずのお父(と)ん(嘉弘さん)や、この3月に結婚したばかりの知弘さんの奥さんも手伝っているしで、とてもいい雰囲気なのも好きみたいですわ」(50代、営業)
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