呉:昔は、若い頃は左翼で右翼に転向した人とか、その逆の人もいて、そういう人材は両方に目配りが利いていたんだけど、今は産経の記者は右翼一直線、朝日の記者は左翼一直線で来た人ばかり。読者はますますそうだろうね。
中川:ツイッターなどSNSの影響もあると思います。基本、自分が好きな人ばかりフォローして、見たいものしか見ない。
呉:ネットの場合、ツイッターだったら140字しか使えないとか、ワード数が少ないから、どうしても単純化された情報しか出てこなくなる。そうすると複合的に物事を判断する習慣や能力がどんどんなくなってしまう可能性がある。
中川:複合的でなく好き嫌いだけで判断される状況のなかで、実は安倍って一部の安倍ぎらいを除くと、嫌われるほどの個性すらないんですよね。それこそトランプとかと比べると。
呉:確かに。政治家としての個性も能力も意志も何もなく、ただ血統だけがある安倍は、だからこそ消去法的に生き残っているのかもしれない。
【PROFILE】
◆くれ・ともふさ:1946年生まれ。評論家。日本マンガ学会理事。8月に本誌連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)を刊行。
◆なかがわ・じゅんいちろう:1973年生まれ。ネットニュース編集者。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)など。
※週刊ポスト2018年9月21・28日号