安倍晋三首相は、秘書時代に父の晋太郎氏(元外相)からこう“戒め”を受けた逸話がある。
「お前には政治家として最も大事な情がない」
今回の総裁選で首相はその「非情」ぶりを遺憾なく発揮したが、それが本格化するのは戦いが終わったこれからだ。自民党では勝者が敗者を裁く“安倍の大獄”が始まる。
安倍陣営の選対本部事務総長を務めた甘利明氏は「首相は了見の狭い男ではない」と言い、高村正彦・副総裁は「戦いが終わればノーサイド」と口にした。
だが、権力闘争を知り尽くすベテラン議員は、それが建前であることをわかっている。12年前の第1次安倍政権時代に安倍首相と対立したことのある、大臣や党三役を歴任した大物政治家が述懐する。
「安倍さんは執念深い。嫌われ、睨まれたら、何年もの間、ほんの軽い役職さえ与えられない。干し上げられるとはこういうことかと痛感させられた」
安倍首相の“粛清リスト”の一番手と見られているのが、齋藤健・農水相だ。