映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、16歳で映画会社、大映のニューフェイスに合格、大部屋から役者の道をスタートした俳優・篠田三郎が、デビュー当時について語った言葉をお届けする。
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篠田三郎は一九六五年に大映のニューフェイスに合格、高校を中退して役者の道に進む。
「将来の目標というのはあまりなかったんですよね。ですが映画への憧れはあって、東宝と大映のニューフェイスを受けたところ、東宝には落ちて運良く大映に受かったんです。学業も続けようと思っていましたが、学校の方針でそれが駄目で。ただ、家が小さな工場をやっていましたから、役者で上手くいかなくとも家業を継げばいいか、みたいな安易な考えはありました。
大映では半年の養成期間があり、いろいろな分野の一流の先生から講義を受けました。一番印象にあるのは講師に来た助監督さんの言葉です。私が『演技が上手くなるにはどうすればいいですか』と質問したところ、『そんなことより体を鍛えておけ』と厳しく一喝されたんです。
今考えれば、当たり前です。演技を上達させる特効薬なんてない、日々努めるしかないんですから。屁理屈をこねるより、若いのだから少しでもしなやかな体を作っておけ、ということだと思います。その教えもあって、養成所の仲間たちはみんな、体を鍛える意識を強く持っていました」
その後は大部屋に配属され、主に通行人などで出演を続けることになる。