ビジネス

ドン・キホーテ創業者安田氏 全権委任したら口を出さない

ドンキの「圧縮陳列」を生み出した安田氏(写真/アフロ)

 今や「安売りの帝王」として誰もが知っているドン・キホーテ。創業者である安田隆夫氏(69才)が東京・府中に1号店をオープンしたのは平成になったばかりの1989年。

 以降、29期連続で増収増益という小売業界で前代未聞の偉業を達成し、売上高1兆円の大企業になった。安田氏を知るジャーナリストの伊藤博敏さんは、その人間性に太鼓判を押す。

「経営手腕はさておき、常にベンチャー精神をもって権威や権力におもねらず、現場における人との出会いや縁を大切にする安田さんの人柄には、いつも感銘を受けます」

 安田氏の行動原理は、「信じて委ねる」だ。

「ドンキ創業以来の経営方針は、人を信じて事業を委ねること。いったんその人物を見込んで任せたら、安田氏はめったなことで口出しをしません。店長に最大の権限を与えるドンキの個店主義はそこからきています」(伊藤さん)

 人間を見極めるために安田氏が心がけるのが、「相手の立場に立つ」ことだ。

「安田氏がよく言うのは、“どうしたら相手を動かせるか”ではなく、“どう働きかけられたら自分は動くだろうか”と考えること。相手の立場を自分に重ねることで、人の動かし方が見えてくる。トップダウン方式の経営者がなかなか持てない視点です」(ビジネス誌記者)

 資産2460億円の大富豪になっても安田氏のポリシーは変わらない。

 自ら築いた地位に恋々としてすがりついて「院政」を敷くお金持ちを尻目に、安田氏は2015年に最高経営責任者と取締役を辞任。実にあっさりと身を引いたのだ。

「これも全権委任したら口を出さないとの方針に従ったものです。引退後は趣味のダイビングに明け暮れる一方、海外でのホテル事業などに参画しています。いくつになっても新しいことにチャレンジするベンチャー精神を忘れず、仕事の虫として“生涯現役”を貫くことこそ、安田さんの生き様です」(伊藤さん)

■安田隆夫(やすだ・たかお)/ドン・キホーテホールディングス創業者
1949年岐阜県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1980年に株式会社ジャスト(現:株式会社ドン・キホーテ)を設立。1989年には第1号店となる「ドン・キホーテ」府中店を開店し、日本最大の総合ディスカウントストアに育てあげた。2015年7月から代表権のない創業会長兼最高顧問に就任。妻との間に1人の息子がいる。2017年に、シンガポールに移住。住まいはセントーサ島にあり、地上2階地下1階の造り。4寝室でプール付き。床面積は約790平方メートルある。

※女性セブン2018年11月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン