あっという間に満員になる人気の講演会がある。カリスマ駅弁販売員・三浦由紀江さん(64才)もそのひとりだ。その魅力とは何か? 三浦さんが語る。
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私は21才の時に学生結婚し、大学を中退して専業主婦になり、3人の子供を育てました。 ところがその23年後、「ウチにはお金がないからお母さんも外で働けば」という上から目線の娘の一言で、急遽JR上野駅で駅弁販売のパートをすることになりました。
「ここならお母さんでもできるでしょ」と娘が決めた職場でした。
それまで、「こんなオバサン雇ってくれない」「パート経験がない」と避けていましたが、44才にして思い切って人生初となる仕事を始めてみると、本当に楽しかった。
私は会社の常識を知らなかったので、ズケズケと社員にモノが言えました。例えば、売れる商品と売れない商品が同じ数だけ売り場に届くのはおかしいと指摘して仕入れ数を変え、現場感覚で発注数や陳列の仕方も変更しました。
すべての仕事の基本となる接客でも工夫を重ねました。会社からは「アイコンタクトが大事」と指示されましたが、主婦目線で考えたら、入店してすぐ店員にじっと見つめられたら嫌ですよね。そこでお客さんが入店する5メートル前から様子をうかがい、「いらっしゃいませ」と挨拶してから5秒間はあえて声をかけずお客さんを観察し、そこで気づいたことを接客に生かす「5メートル、5秒の法則」を導入すると、売り上げがグンと伸びました。
職場での人材育成は子育てと同じ。愛情を持って接し、自分が教えるのではなく、相手が気づくまで時間をかけて見守ると、どんな人間でも成長します。
シェイクスピアは、「世の中にはよいも悪いもない、捉え方次第」という言葉を残しています。私自身、話を聞いてくれて仕事を任せてくれる上司に出会い、「認めてもらえた。もっと頑張ろう。努力しよう」と思えるようになり、自分を変えられました。
仕事をしていく上で身についた考え方は、起こることはよいことも悪いこともすべて自分が原因だということ。仕事を始める前まではすべてのトラブルの原因は人のせいだと思っていました。常に自分が正しいと思っていたんです。でも違った。
例えば仕事ができない社員に向かって文句を言っていた時もあったのですが、その社員の代わりに自分から動いて、その行動に責任を持ち、一生懸命やる。すると周りも変化する。 あれ、うまくいかないなと思ったら、まずは自分が変わる必要があるんです。学歴や仕事の経験がなく、年を取っていても、まったく関係ありません。
大切なのは、自分で限界をつくらないこと。頑張ってきたことは、必ず成果につながると私は確信しています。
【Profile】
三浦由紀江さん(64才)/23年間の専業主婦生活を経て、44才で駅弁販売のパートに。駅弁の売り上げを5000万円アップさせて、年商10億円超を達成。2013年に定年退職後も「駅弁マイスター」として活躍。
※女性セブン2018年11月22日号