男の顔は履歴書だ、と言われたりする。だが、なかには“例外”もあるようだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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11月、ある地方の幹部人事が写真とともに公表された。その中の一人に、恰幅がよく、いかにも大物政治家然として写っていた人物がいた。李忠凱という名前だった。地方の議員にありがちな、貫禄があり、さしずめ県議会議長レベルのベテラン風である。
その李氏の写真が公開されると、地元にとどまらない大きな反響がネットの中で巻き起こった。曰く、「こんなにも老けてしまうほど、共産党の仕事は過酷なのか……」。
なんといってもこの李忠凱、生まれたのは1980年。つまり「八〇后」で、現在38歳という。それなのに髪は薄く、残った髪の毛もほとんどが真っ白になってしまっていて、とても「八〇后」のイメージではない。
そんな理由からネットではたちまち大きな話題となり、やがて李氏がこんな老けてしまったのは「仕事が辛すぎるからだ」という理由に落ち着いていったのである。
11月17日付『人民日報』の記事〈この「八〇后」幹部 ネットで炎上〉によれば、李氏は現在、雲南省大桃県湾碧郷党委員会書記。いわゆる「基層幹部」という立場だが、ネットでは、「わが国の基層って、半端ないな」といった反応が沸き起こったと記事では紹介されている。
本来であれば、ちょっとした笑い話のはずだが、何を思ったか現地政府はこのネットの反応に対して、正式な身元調査を開始した。その結果、出されたのが「公示公告」という正式回答(以下、「回答」)だったというから驚きである。
「回答」には、ネット市民から〈李氏の写真が実年齢と差があり過ぎるという指摘があった〉とした上で、記載された年齢に疑いの声が上がったとし、〈楚雄州政府は事態を重く見て迅速に調査を実行した〉というのだ。そして、〈写真が李忠凱本人であること〉と〈彼が本当に1980年8月生まれであることを確認〉したと「回答」したのだ。
それにしても政府の正式調査まで引き起こしてしまう「老け顔」とはどんなものなのか。李氏自身には何の落ち度もないだけに悲しい話である。