ピースワンコで獣医師をしていたれいこスペイクリニックの竹中玲子先生(撮影/田中智久)


──事実関係をピースワンコに問い合わせると、《事実と異なります。常勤の雇用スタッフ以外に応援スタッフや外注の清掃業者スタッフら複数名が毎日の各犬舎の業務に携わっています。獣医療についても、常勤の雇用獣医師は1名ですが、他に継続的に業務委託している獣医師がいるほか、近隣の複数の動物病院にもご協力いただいています》という。

 対して竹中先生はこう反論する。

「確かに非常勤の獣医師はいましたが、数人であり、充分とはいえない状況でした。また、“近隣の動物病院”といっても歩いて行ける距離にはなく、スタッフが車で動物を連れて行く必要がありました。緊急事態に対応しきれていなかったと思います」

杉本:動物の福祉にまったく配慮していない状況ですね。狭い部屋に押し込められれば、精神状態が不安定になる。さらに動物を保護して里親を探し、責任を持って譲渡するのは、本来はとても手間がかかる。1頭でも大変なのに、2000頭以上の犬をどう譲渡していくのでしょうか。

竹中:譲渡はかなり厳しい状況にあります。そもそも収容されている犬の多くは元は野犬。中には、噛み癖がある子もいて、人に慣れさせて里子に出すには難しい犬がほとんどです。エサは部屋ごとにまとめて与えていて、弱い犬はエサにありつけず衰弱してゆく。スタッフが部屋に入ると、集団リンチが頻繁に行われ、弱い犬が噛み殺されている。

杉本:ある意味、殺処分されるよりも苦しい状況になってしまっていますね。

竹中:まさにそう。避妊去勢手術がほとんど行われないままオスとメスが同居しているから、スタッフが知らないうちに赤ちゃんが生まれていることすらある。そのうえ、小さくて弱く、血のにおいのする赤ちゃんは飢えた他の犬に食べ散らかされてしまう。肉片を片付けるスタッフの多くが、PTSD(心的外傷)を発症していました。

杉本:それは…。先生もつらかったでしょう…。

竹中:獣医としてこれまで動物の死に立ち会いましたが、本来死ななくてもよかった犬を見ているとショックで…。記録を残すために死体を調べるのですが、噛まれたことによる外因性ショック死や失血死した犬ばかり。暗い気持ちに襲われました。

──集団リンチに関する事実関係をピースワンコに取材すると以下の返答があった。

《早朝など人の目が届かないときに、野犬どうしがけんかをしたり、弱い犬がいじめられたりして、残念なことに死に至るケースもありました。(中略)しかし、それは、殺処分を防ぐためにすべての犬を引き取ってきた結果、やむを得ず生じている状況です》

 しかし竹中先生は、「同居している犬からの攻撃によって体に穴が開いて亡くなる状態は、動物にとって殺処分されるよりも幸せだといえるのだろうか」と疑問を投げかける。

※女性セブン2018年12月20日号

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