ぼく自身も、貧乏から脱出するために、勉強して医師になり、懸命に人生を切り開いてきた。しかし、48歳のときにパニック発作に見舞われた。頻脈になり、冷や汗が出て、その場にうずくまるしかなかった。
ひたすらがんばるだけの生き方や成長至上主義には限界がある。そう思って、2000年に書いたのが『がんばらない』(集英社)だった。
国内にも、幸福度を測るランキングがある。日本総研が発表している都道府県別幸福度ランキングだ。2018年度は1位福井県、2位東京都、3位長野県という結果だった。これらは毎回、上位の常連だ。
ランキングは、いい仕事が見つかるかどうか、教育が充実しているかどうか、文化的な生活が送れるかどうか、健康で長生きかどうかなどを点数化し、総合点で決められている。
山梨県は、前回の調査(2016年)では14位だったが、6位へ躍進した。「文化」の要因が上昇したことが大きい。ちなみに山梨県には、昔から「無尽」という相互扶助のしくみがある。月に1回ほど特定のメンバーが集まって、飲み会を開いたりするのだが、みんなでお金を積み立てて、趣味や旅行などの資金に充てたりする。こうしたしくみは、福島や九州、沖縄などにもあり、人とのつながりを育ててきた。
アメリカのブリガムヤング大学の研究では、健康寿命を伸ばすのに大きく影響しているものとして、「社会とのつながりの多さ」を挙げている。興味深いのは、健康によいことで知られている「太り過ぎない」「運動する」「酒を飲み過ぎない」「たばこを吸わない」という4項目よりも、健康寿命に与える影響が大きいとしていることだ。そして、これは幸福度を高める要因としても重要なポイントだと思う。