さらに、日清食品が2017年より発売している3食パックの「お椀で食べる」シリーズ(「チキンラーメン」「カップヌードル」「日清のどん兵衛」「出前一丁」)は、停滞する袋麺市場の“救世主”となりそうなほど好評を博している。
従来の即席麺ブランドはそのままに、小容量の麺と具材を袋に詰めただけの商品なのだが、調理方法は至ってシンプル。お椀に麺と具材を入れてお湯を注いで3分待つだけ。小さなお椀ひとつさえあればカップ麺を食べるのと手間は変わらない。これが意外にも老若男女の袋麺需要とピタリと合致した。
「寒い日は特にご飯と一緒に暖かい味噌汁やスープが欲しくなるが、わざわざ作るのは面倒。お椀で食べられるこの袋麺は、スープ替わりにもおかずの足しにもなるので便利」(30代独身男性)
「カップ麺は一人だと食べきれなくて残してしまうこともあったので、小さくて容器のゴミも出ないこんな袋麺が発売されて良かった」(70代女性)
まさに個食・中食の全盛時代にマッチした商品といえるが、こうした大手メーカーのテコ入れ策も奏功して2018年度の袋麺市場は5年ぶりの回復が見込まれるという。前出の富士経済・木下氏がいう。
「袋麺が停滞しているといっても、販売額でいったらまだ1200億円弱もある巨大な市場です。しかも、メインターゲットは袋麺を食べ慣れているシニア層やファミリー層が中心なので、今後も各メーカーは既存品のブラッシュアップや新フレーバーの開発、新たな食べ方提案などを繰り返して需要を深堀りしていくでしょう」
確かに、「サッポロ一番」や「チキンラーメン」など、発売から50年、60年たった商品が今でもブランドシェアの上位を占めていることをみると、いかに根強いファンが多いかがうかがえる。カップ麺と合わせ、日本の即席麺は多少の市場変動があっても決して廃れない国民食といえる。