中国にはお金を焼く、という不思議な風習がある。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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少し前、彼女の誕生日に人民元を折って作った花束やハートマークで祝った男の上げたSNSが炎上したことがあった。札束でつくった花束が500万円超というから驚きだが、こちらの話題は同じお札ネタでも中身がちょっと違う。
清明節──。先祖を偲ぶ日であり、家族が集まり先祖の墓をきれいにして宴会をする。現在は4月5日から三日間の連休となる。
墓参りでは、先祖が天国で不自由しないように豪華なご馳走などを用意するのだが、地方によってはお金に困らないよう紙幣に模した紙を焼く習慣もある。
今年、清明節の連休を前に中国の中央銀行である人民銀行が異例の通達を出した。それは「人民元紙幣を模した紙片を製造してはならない」という内容だった。
法律は人民元に関する図柄の「使用管理法」である。当たり前のことだが、これは一歩間違えばニセ札造りであり、つかまれば重罪である。
この期間、墓地の周囲の祭祀用品店には、人民元とそっくりなおもちゃの札束が山と積まれるのも不思議な光景だ。なかには、なかなかよくできたものもあり、当局が神経を尖らせるのも無理はないのだが、その一方で中国はいま、キャッシュレスが最も進んだ国の一つだ。早晩そんな心配もなくなるのではないだろうか。