──3年前の2016年にプロパーの白井俊之さんを社長兼COOに指名していますが、長い目で見た後継者問題、世襲の是非はどう考えますか?
似鳥:世襲で成功するのは、10人に1人ぐらいだと思います。それくらい難しい。「創業者に2代目なし」というか、言い換えれば「美田を残さず」と。だから将来も世襲は考えていない。
──今秋は消費増税が控え、来夏は東京五輪と、目先はイベントが続く日本ですが、少し長い目で見て、令和という新しい時代における日本経済の在り方や活性化に必要なものは?
似鳥:米国は今年から来年、経済成長率の低下が不可避で、これに引っ張られるように日本も景気後退していく。2021年から2022年あたりが、おそらく大底となり、そこから先も底這いに近い状況でしょう。
そもそも日本は人口に対する店舗数が多すぎます。年商50億円以上の中規模以上のスーパーマーケットは約400社。総店舗数は1万3000店を超えています。本来、スーパーマーケットが必要とする商圏人口の目安は2万5000人。しかし、現在の総店舗数で日本の人口を割れば9000人にしかなりません。
これから人口減少はさらに進む。小売業は米国のように再編淘汰が進まないと成り立たなくなる。結果、一部の企業による寡占化が進行するでしょう。お客様の求めるものを実現できる企業に勢いが出て、対応できない企業は淘汰されるのではないでしょうか。
当社は、これまでもそうしてきたように、不況はチャンスと捉え、2032年に3000店舗、売上げで3兆円という旗を立てて今後も突き進んでいきます。
【PROFILE】にとり・あきお/1944年樺太(サハリン)生まれ。株式会社ニトリホールディングス会長。北海学園大学経済学部卒業。広告会社へ就職した後、札幌市内に「似鳥家具店」創業。1986年、社名を「ニトリ」に変更。2002年東証一部へ上場。32期連続の増収増益を果たしている。
●聞き手/河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。ジャーナリスト。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号