グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(70)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
吉村作治氏(76)が持ってきたのは、サハラ砂漠で採取した「ローズ・ド・サハラ」。
謎めいた薔薇のような形状の「ローズ・ド・サハラ」。サハラ砂漠の砂中、長い歳月と自然現象によって結晶した鉱物である。
「30年程前にアルジェリアからコートジボワールまで旅した際、サハラ砂漠でテントの杭を打とうとした場所で採取したもの。こんなに大きいのは珍しい。きっと神様が僕にくれたのです」
22歳から110億円もの資金を集め、命がけで遺跡発掘をしてきた吉村氏を象徴する一品だ。
70歳過ぎからは怪我だらけ。病魔にも侵された。それでも好奇心の塊は消えず、持論の「ピラミッドは王墓ではない」の解明などに今後も挑む。そのための費用捻出にと生前葬も検討中だ。「生きているうちなら、香典を多く包んでもらえると思ってね」