「性選択のあり方が変わってしまえば、美人の基準も変わっていく」と言う中野信子さん
中野:性選択のあり方が変わってしまえば、美人の基準も変わっていくね。たとえば人が視覚を失って男性が女性を選ぶときのポイントが顔の美しさじゃなくなれば、「居心地のいい人」であることが高ポイントになっていったりするかもしれない。
スー:女友達が結婚相談所に行ったら、カウンセラーから「30歳の美人より、22歳の不美人」とハッキリ言われたって。結婚相談所では美しさより若さに高い価値がつくと。嫌な話ですが、子どもを作ることを考えるとそうなるんだそうです。
中野:「若さ」にも性別の非対称を感じるね。「やっぱり男は若いほうがいいよね」と思っている女性は、少なくとも私の周囲ではほとんど見ないし。
スー:「お金」「地位」「人生経験」がないとマイナスとみなされがちな男という性別。まったく同じ資質が「うぶ」としてプラスに捉えられがちな女という性別。恐ろしい! 加齢がネガティブ要素にならない男システムは、正直うらやましいわ。年齢やキャリアの積み重ねがプラスに転じやすい。女の場合は逆なんだよね。さっさと是正されてほしいけど、変化はいつも期待よりは緩やかなもの。過渡期をどう生き延びるか、それぞれが考えないとね。旧来型の性選択に振り回されている場合ではない。
中野:その通り。今の社会でよしとされている気遣いを筆頭とした「女らしさ」は全部、近い将来にはビッグデータの解析で誰でもできるようになるしね。女がやらなくてもAIがそれこそ完璧にできるようになっちゃう。
撮影/藤岡雅樹
男は美人を「モノ」として見ている? レディースデーがある女の方が優遇されている? 女vs男の単純な図ではなく、女を取り巻く社会構造のモヤモヤをジェーン・スーさんと中野信子さんが解きほぐした対談集