ライフ

青森県の電気のない「ランプの宿」 魅力は“贅沢な退屈”

渓流沿いに建つ総青森ヒバ造りの「健六の湯」

 昭和4(1929)年開湯の「ランプの宿 青荷温泉」は、青森県のほぼ中央、田代山や雷山に挟まれた秘境・青荷渓谷に佇む一軒宿だ。JR弘前駅から弘南鉄道と路線バス、宿の送迎バスを乗り継いで、約1時間半。急カーブの山道を進むうちに、携帯電話は圏外に。

 マイカー客が不安にならないよう、道中には「あと半分」などの道案内や「よぐきたねし」など歓迎の言葉を記した標識が立つ。急カーブが続く村道を上がっていくと、木々が少し開けた間から、山の中にポツンと佇む宿が見えてくる。

 この宿には電気が通っておらず、客室にはテレビもない。ランプの灯りの下、虫の声と川のせせらぎを聴いていると、子どもの頃の夏休みの気分に戻り、畳の上で昼寝をしてしまった。

「ここは不便で退屈かもしれませんが、現代人には貴重な『贅沢な退屈』を味わってほしい」(代表取締役社長・原田篤久さん)。その言葉どおり、寝て食べて温泉につかる以外は何もしないゆったりとした時間を過ごし、心も体もフル充電。10月中旬から宿は紅葉に染まる。

マイカー客が不安にならないよう、道中には「あと半分」などの道案内や歓迎の言葉を記した手書きの標識が立つ

食事は「山の中の田舎料理」がコンセプト。岩魚の塩焼きや鴨鍋、山菜・きのこなど山の幸が並ぶ

龍神の滝を眺める露天風呂を備えた「滝見の湯」など趣の異なる4つの湯めぐりを楽しめる

午後、200個以上ものランプが館内に点される

【ランプの宿 青荷温泉】
住所:青森県黒石市大字沖浦字青荷沢滝ノ上1-7
1泊2食:2名以上1室 大人1名1万950円(入湯税込)~
アクセス:弘南鉄道・黒石駅より弘南バスで「虹の湖公園」下車、道の駅「虹の湖」~宿の送迎あり。マイカーの場合は、東北自動車道黒石ICより約40分、青森空港より約1時間20分

取材・文■城川佳子 撮影■中庭愉生

※週刊ポスト2019年9月20・27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン