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「ONE TEAM」を連呼する会社の上司が信用できない理由

◆「プロジェクトX」とラグビー日本代表との共通点

 では、わが国にはラグビー日本代表のようなチームワークの模範的例はほかにないのだろうか?

 いや、ある。かつてNHKの人気番組だった「プロジェクトX~挑戦者たち~」に登場したチームがそれだ。番組では企業の製品開発現場のほか、人命救助、難工事、国家的プロジェクトなどさまざまなプロジェクトが取りあげられた。

 その一つ、日本初の国産旅客機YS-11の開発プロジェクトは、つぎのようなメンバーによって遂行されたと記されている。

〈「隼」の太田、「紫電改」の菊原、「零戦」の堀越、そして「飛燕」の土井。各主任には、戦前・戦中、国産戦闘機の名残の数々を設計してきたつわものが揃った。

 木村とともにこの五人は、黒澤明の映画「七人の侍」にかけて、いつしか「五人のサムライ」と呼ばれるようになる〉(NHKプロジェクトX制作班『プロジェクトX 挑戦者たち3』日本放送出版協会、2003年)

 また別のプロジェクトについては、つぎのような記述もある。

〈「“新聞界の風雲児”前田久吉」「……内藤はいつのころからか、『昭和の塔つくり』あるいは『塔博士』と呼ばれるようになっていた」「宇治野巧。“人間コンピュータ”とあだ名された男だった」〉(『プロジェクトX 挑戦者たち4』)

 どうだろう。ラグビーの日本代表と同じようにメンバーの個性が輝いているではないか。最近の表現を使えばキャラが立っているのだ。だからこそメンバーは、自分の名誉にかけてチームのために貢献しようという気持ちになる。

 その証拠に、東京タワーの建設プロジェクトに参加した鳶(とび)の親方、増田英男は「とにかく、自分の名が残るからには、どんな仕事であろうと無様な仕事だけはしない」と常に固く念じながら仕事に取り組んだという(同上)。

 そこからでてくる自発的なモチベーションと結束力が奇跡を起こしたり、歴史に残るような事業を成功に導いたりしたことは疑いがない。それは、ただ己を殺し、自己犠牲を強いる日本型チームワークと対局にあるといってよい。

「ONE TEAM」は主体的につくったものだから尊いし、メンバーの一人ひとりが輝いているから魅力的なのだ。日本代表がせっかくつかんだ栄光のシンボルを、違った色に塗り替えるようなことはしてほしくない。

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